Speciality Guidance
骨粗鬆症外来は週1回木曜日の午前中に行っています。超高齢者社会になり、潜在的な骨折リスクを持った骨粗鬆症患者さんが今後も確実に増えてくることが予測されます。対象は骨粗鬆症の患者さんが中心ですが、骨軟化症や副甲状腺機能亢進症といった骨代謝性疾患のフォローも行っています。
骨粗鬆症は正しく診断することからはじまります。これまでに腰痛で骨粗鬆症と診断されて治療されていた患者さんの中に、実は多発性骨髄腫、がんの転移、悪性リンパ腫、原発性上皮小体機能亢進症、骨軟化症であったこともあります。当診療科では、まず正しく診断することを重視しています。骨粗鬆症に関していえば、ここ数年でさまざまな骨粗鬆症治療薬が発売され、週1回から月1回製剤、また剤型も錠剤から注射剤と選択肢がどんどん増え、中には6か月に1回の注射という選択肢もあります。患者さんにすべてを説明して選んでいただくというよりは、こちらで患者さんの現在の病態を把握し、患者さんの通院事情をふまえた処方となるのが現状です。この際、骨密度や単純X線検査の他、骨代謝マーカーという血液や尿で骨代謝動態を把握する診断手法を使って薬剤選択の補助とします。当科は大学病院であるため、内科など他の診療科で治療を受けているステロイド剤による骨粗鬆症の患者さんが比較的多いのが特徴です。現在ではステロイドを大量に使用したり、少量でも長期にわたってステロイドを使用する場合には、定期的に診察を行って骨の状態を把握し、ビスフォスフォネートという骨強度を維持する治療を行うことがガイドラインで定められています。その他、妊娠後に発症する骨粗鬆症も扱っており、適切な指導と薬物治療を行っております。また当科では頸椎から骨盤までの全脊椎の線写真を撮影して正面と側面からみた背骨の変形や骨折の有無、バランスの評価を行い、せぼねの健康状態をチェックして患者さんに説明しています。骨粗鬆症は骨折をきたさなければ症状がほとんどありませんが、背骨や足のつけね、手関節骨や腕のつけねといった部分に骨折をきたしてはじめて症状がでてくるため、これら骨折を予防して生活の質を保つことが大事です。したがって、薬物治療のみに依存せず、運動療法や食事療法など日々の生活の中でできる予防法も指導しています。また各自治体で行われている骨粗鬆症の節目検診で低骨密度により紹介されてくる方も多く、腰や大腿骨の付け根で骨密度を精査して実際に治療が必要かどうかの判断も行っています。静岡県は全国的にも健康長寿の県のひとつです。骨粗鬆症による脆弱性骨折を予防することが健康寿命の延伸につながっていくと思われます。一人でも多くの骨粗鬆症患者さんの骨折が予防できればと考えて診療を行っています。
骨粗鬆症以外の骨密度が低下する疾患を診断し、適切な治療ができるようにします。中には原因不明の血液中のリン値の低下と骨密度の低下をきたし、全身の骨・筋肉の痛みを生じる病気があります。体のどこかにできた腫瘍によって骨軟化症が発症している可能性があり、腫瘍病変の局在の精査を行う必要があります。そうでない場合にはリン製剤の投与が効果がある場合があり、状況に応じて適切な治療を行っていきます。また副甲状腺機能亢進症は高カルシウム血症で発見されることがあります。尿路結石、慢性胃炎の既往があり、血液中のアルカリフォスファターゼという数値が上昇していれば、強く疑って精査をします。局所の腫瘍が発見できれば、手術によって腫瘍を摘出することにより全身の症状が改善していきます。