浜松医科大学医学部附属病院

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リンパ浮腫センター

センター長 教授 中川 雅裕

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ご挨拶

 リンパ浮腫に対する専門的な診療を目的とし、令和5年1月1日 リンパ浮腫センターを開設いたしました。
 リンパ浮腫は、リンパ液の還流障害により手や腕、足などの浮腫(むくみ)を特徴とする病気です。本邦においてはリンパ浮腫の最も多い原因は、悪性腫瘍に対する治療によるものです。悪性腫瘍手術時のリンパ節郭清や放射線治療はリンパ還流を障害し、リンパ浮腫を発症する原因となります。悪性腫瘍の種類や治療法によって異なりますが、発生率は10%~50%と報告されています。リンパ浮腫を発症すると、手や腕、足のむくみや炎症、痛みなどが生じて、生活様式が変化してQOL(生活の質)が低下します。悪性腫瘍の治療に伴うリンパ浮腫は、"仕方がないこと"と考えられていた時代もありましたが、QOLの向上への関心が高まり、リンパ浮腫に対する治療体制の構築が全国的に進められています。リンパ浮腫ガイドラインの作成や治療指針の策定、専門資格の認定制度、保険診療制度の改正など、近年リンパ浮腫の診療は劇的に変化しています。
 浮腫はさまざまな原因により生じるため、リンパ浮腫の診断にはリンパ還流を評価するリンパシンチなどの特殊な検査が必要です。またリンパ浮腫の治療は、弾性包帯や弾性着衣を用いた圧迫療法、フットケア、運動療法、リンパ管と静脈を吻合しリンパ液の静脈への還流を促す手術(リンパ管静脈吻合術)などがあります。そのため、多くの診療科の医師だけでなく多職種から成るチームでの診療が必要です。当センターでは、外科や形成外科、リハビリテーション科などの医師、リンパ浮腫療法士、看護師、理学療法士、作業療法士がチームを組んで、リンパ浮腫に対する専門的な診療の提供に取り組んでいます。悪性腫瘍に関連したリンパ浮腫に限らず、先天的なリンパ還流障害による原発性リンパ浮腫、緩和ケアにおける浮腫、リンパ浮腫が疑われる患者さんについても、当センターでの診療を受け入れております。悪性腫瘍の状態や全身状態に応じ、悪性腫瘍の診療を妨げることなく、QOLの向上を目指し、それぞれの患者さんに適したリンパ浮腫の診療を提供いたします。