感染対策指針
2007年9月18日(制定)
2023年4月1日(改訂)
1 院内感染対策に関する基本的な考え方
浜松医大病院は、良質で高度な先進医療を安全に提供することを使命とする特定機能病院である。医療関連感染を未然に防止するとともに、ひとたび感染症が発生した際には拡大防止のために、その原因を速やかに特定して、これを制圧、終息させることが重要である。また、院内感染の原因菌となる耐性菌を抑制するため、感染症治療において適切な抗菌薬を使用することが重要である。これらの院内感染対策を全従業者が把握し、病院の理念に則った医療を提供できるように本指針を作成する。
2 院内感染対策に関する管理組織機構
(1)感染対策委員会(ICC)
病院長を議長とし、関係各部門責任者及び感染制御センター代表を構成員として組織する院内感染対策委員会を設け、毎月1回定期的に会議を行い、次に掲げる審議事項を審議する。また、緊急時は、臨時会議を開催する。病院長不在の際の緊急時には、リスクマネジメント担当の副院長及び感染制御センター長が代行して執行する。
【感染対策委員会審議事項】
- 院内感染対策の検討・推進
- 院内感染防止の対応及び原因究明
- 院内感染等の情報収集及び分析(抗菌薬の使用、分離菌種などの情報を含む)
- 院内感染防止等に関する従業者の教育・研修
- 従業者の感染管理
- その他院内感染対策に関する事項
(2)感染制御センター
院内感染等の発生防止に関する業務を行うため感染制御センターを置く。感染制御センターは、病院長が指名する医師(ICD)、看護師(ICN)、微生物検査技師、薬剤師、事務職員等で構成され、感染対策チーム(ICT)及び抗菌薬適正使用支援チーム(AST)を組織し、院内感染発生防止のための調査・研究及び対策の確立や抗菌薬の適正使用を推進することに関し、迅速かつ機動的に活動を行う小集団(実働部隊)である。それぞれの職種の専門性を生かし、協力しながら組織横断的に活動を行う。また、緊急時は、臨時会議を開催する。
【感染制御センターの業務】
- 感染対策システムの構築
- 従業者の教育、研修
- 院内感染の状況、対策の周知
- 感染対策相談(コンサルテーション)
- 院内感染の発生動向の監視(サーベイランス)
- 院内感染の発生率
- 分離菌種の検討
- 地域の状況との比較対比
- 抗菌薬の使用状況の把握
- 院内感染対策実施の適正化(レギュレーション)
- 感染対策マニュアルの作成と改訂
- 感染症関連資料(抗菌薬や消毒薬、各種ガイドライン、感染防止用医療機器の情報など)の整備
- 適正な感染対策の実施についての各部署への立ち入り調査(病棟ラウンド)
- 抗菌薬の適正使用の周知と監視
- 改善への介入(インターベンション)
- 従業者の感染管理
- 抗体の保持情報の把握
- ワクチン接種
- 二次感染の防止
- 針刺し(血液暴露)時の対策
- リンクスタッフと共に院内感染対策についての連絡や活動
- 各種専門委員会との連絡調整
- その他院内感染の発生防止及び抗菌薬適正使用に関する事項
- 感染対策地域連携に関する事項
(3)リンクスタッフ
リンクスタッフは、各部署の感染対策及び抗菌薬適正使用支援活動のメンバーとして同部署職員に感染対策委員会の決定事項を確実に浸透させるとともに、感染対策や抗菌薬の適正使用に関する必要な知識・技術を習得し、同部署職員に教育・研修を行う。また、感染制御センター長は、感染対策及び抗菌薬適正使用支援等について連絡調整するため、リンクスタッフを年4回(3ヶ月毎)招集し、リンクスタッフ会議を開催する。同会議にリンクスタッフは積極的に参加協力をする。
3 従業者研修に関する基本方針
- 院内感染防止対策や抗菌薬適正使用の基本的考え方及び具体的方策について従業者に周知徹底を図ることで従業者の院内感染や抗菌薬適正使用に対する意識を高め、業務を遂行する上での技能やチームの一員としての意識の向上等を図ることを目的に実施する。
- 従業者研修は、就職時の初期研修のほか、病院全体に共通する院内感染や抗菌薬適正使用に関する内容について、年2回以上全従業者を対象に開催する。院内講師による研修の場合、同じ内容の研修を複数回実施し、e-ラーニングによって受講機会の拡大に努める。必要に応じて、各部署、職種毎の研修についても随時開催する。
- 各部署主催の自主研修も積極的に開催し、参加状況等を感染制御センターに報告する。
- 従業者は、年2回以上研修(外部研修を含む)を受講しなければならない。
- 研修の実施内容(開催日時、出席者、研修項目等)又は外部研修の参加実績(受講日時、研修項目等)等を記録・保存する。
4 感染症の発生状況の報告に関する基本方針
院内で発生した感染症の発生状況や原因、抗菌薬の使用状況に関するデータを継続的かつ組織的に収集して、的確な感染対策及び抗菌薬適正使用を実施できるように、各種サーベイランスを実施する。
- MRSA などの耐性菌検出状況のサーベイランス
- 伝播力が強く、院内感染対策上問題となる各種感染症のサーベイランス
- 外来・入院病棟におけるインフルエンザ迅速検査者数及び陽性者数のサーベイランス
- カテーテル関連血流感染、人工呼吸器関連肺炎、尿路感染、手術部位関連感染などの対象限定サーベイランスを可能な範囲で実施する。
- 広域スペクトラム抗菌薬や抗MRSA薬等の抗菌薬使用状況のサーベイランス
- 広域スペクトラム抗菌薬や抗MRSA薬等の抗菌薬使用報告書の提出率のサーベイランス
5 アウトブレイクあるいは異常発生時の対応に関する基本方針
- 各種サーベイランスをもとに、院内感染のアウトブレイクあるいは異常発生をいち早く特定し、制圧の初動体制を含めて迅速な対応がなされるよう、感染に関わる情報管理を適切に行う。
- 微生物検査室では、業務として検体からの検出菌の薬剤耐性パターンなどの解析を行って、疫学情報を日常的にICT、AST及び臨床側へフィードバックする。
- アウトブレイクあるいは異常発生時には、その状況及び患者への対応等を病院長に報告する。対策委員会を開催し、速やかに発生の原因を究明し、改善策を立案し、実施するために全従業者への周知徹底を図る。病院長不在の緊急時には、リスクマネジメント担当の副院長及び感染制御センター長が代行して執行する。
- 報告の義務付けられている感染症が特定された場合には、医事課経由にて速やかに保健所に報告する。
6 患者等への情報提供と説明に関する基本方針
- 本指針は、その要約を本院ホームページにおいて、患者又は家族が閲覧できるようにする。
- 疾病の説明とともに、感染防止の基本についても説明して、理解を得た上で、協力を求める。
7 感染対策に関する地域医療機関との連携
特定機能病院として、本院における院内感染対策及び抗菌薬適正使用支援の実施にとどまらず、地域全体における感染対策の向上に積極的に取り組む。具体的には、本院感染制御センター員と地域中小病院の感染管理担当者との感染対策合同カンファレンスの定期的開催や、地域大規模中核病院と感染防止策に関する相互評価を実施するなどして、感染対策に関する地域医療機関間の連携強化に努める。
8 その他院内感染対策推進のための基本方針
- 従業者は、感染対策マニュアルに沿って、手洗いの徹底、マスク着用の励行など常に感染予防策の遵守に努める。
- 従業者は、自らが院内感染源とならないよう、定期健康診断を年1回以上受診し、健康管理に留意するとともに、病院が実施するB型肝炎、インフルエンザ及び小児ウイルス性疾患ワクチンの予防接種に積極的に参加する。
- 従業者は、感染対策マニュアルに沿って、個人用防御具の使用、リキャップの禁止、安全装置付き器材の使用、真空採血管ホルダーの利用、職業感染の防止に努める。
- 従業者は、抗菌薬適正使用マニュアルに沿って、常に抗菌薬の適正使用に努める。
- 本指針は、感染対策委員会において毎年見直しを行う。