University Hospital Introduction
本院は、令和4年1月4日先端医療センターを開設いたしました。
本院における近年の新規入院患者数、手術件数、放射線・化学療法の症例数並びに分娩件数の増加を踏まえ、手術室の増設、放射線治療室や外来化学療法センターの充実、周産母子センターの機能強化等を目的として、「先端医療センター」(通称:aMeC)を開設いたしました。
( 先端医療センター:通称 aMeC:Advanced Medical(Treatment) Center )先端医療センターでは、放射線治療、低侵襲手術、がん化学療法、内視鏡検査、周産母子関係の機能拡張を行いました。そしてメディカル・サポート・エリアと今後整備が予定されている周術期管理センター(仮称)との連携により、入院患者さんの利便性向上と円滑な入退院管理が更に対応できるよう体制を整えてまいります。
・がん治療:
手術支援ロボット「ダビンチ」や内視鏡下による身体に負担の少ない手術、放射線治療、化学療法など患者さんの状態に対応した治療を実施できる体制を強化し、患者さんの早期社会復帰の実現を目指します。
・周産期医療:
NICU9床、GCU12床を整備し、また、今後既存病棟4階にMFICU(母体胎児集中治療室)を整備することにより、ハイリスク妊娠のみならず全ての母子に対しての妊娠、分娩、産褥、新生児期管理について安全性・快適性、さらに無痛分娩対応体制の充実を目指します。
ここでは、今後先端医療センターで行われる医療体制の紹介と、一般市民向けの広報誌「はんだ山の風」にも掲載している「第45号 先端医療センター特別号」を提示します。
・NICU・GCU 周産母子センター
・内視鏡センター 光学医療診療部
・メディカル・サポート・エリア
・外来化学療法センター(化学療法部)
・手術部
・放射線科 放射線治療
1) 病棟面積の拡張:NICUは約2.5倍、GCUは約3.5倍の広さになり、ゆとりのある医療環境が整います。また、家族室や面談室、NICU入口のカフェスペースの新設や、医師室などスタッフのスペースを整備し、集中治療だけでなく、家族支援、スタッフ支援の充実が期待されます。
2) シーリングサプライユニットの導入:このシステムは治療に必要とされるエネルギー(医療ガス、電気)の他、各種医療情報を天井面の活用によって集約したものです。今回の導入でこれらの配管や電気配線が床を這わない状況になり、清掃も行いやすく、感染対策が強化されます。さらに治療処置や看護ケアの際の動線の確保が容易となり、重症新生児の治療環境や安全性の充実が期待できます。
3) NICU部門システムの導入:新生児医療に特化した部門システムを導入し、業務負担の大幅軽減と入院児の医療データの一元管理により医療の質向上も期待できます。
4) GCU増床:GCUが6床から12床に増床され、NICUと併せて21床での運用となります。これまでの満床時における受け入れ調整や病棟間の患者さんの移動が解消され、より安全・安心な新生児医療の体制が確保できると考えられます。
これまでの新生児医療レベル向上のための努力に加え、この度の医療機能強化によって一層充実した新生児医療施設としての環境が整いました。今後もより良質な医療を提供してまいります。
GCU
1. 最新内視鏡システムの導入:8診療科における内視鏡検査の統合センターとして、検査室を現在の4室から7室に拡張しました。また、最新の検査・治療に対応するため、最新の内視鏡システムを導入し、各種精密検査、低侵襲内視鏡治療、先端医療が可能となっています。
2. 体制の強化:難易度の高い先進的な内視鏡検査や内視鏡治療を支えるため、麻酔科による全身麻酔管理を可能とし、臨床工学技士および放射線技師による検査補助も実現しました。看護部門は中央診療検査部門から光学診療部門として独立し、より専門性が発揮できる体制となりました。
鎮静後の患者さんを観察するリカバリールームは、セントラルモニター管理によって患者さんの安全により配慮できるようになります。感染管理面では動線の配慮により今まで以上に感染対策が徹底できる環境となりました。
内視鏡検査機器と診療技術は、日本が世界を常にリードしています。今後も人工知能(AI)の診断補助などさらなる機器開発とともに、診療技術、診断精度の向上や治療手技の発展が期待されます。大学病院の使命である最新医療の提供は本県の地域医療全体の向上にもつながると考えています。先端医療センターにふさわしいより良い内視鏡診療を実施するためにスタッフ一同協力して尽力いたします。
咽頭麻酔室
メディカル・サポート・エリアは、受付・待合スペース、2つの診察室、7つの個室(面談室)を整備し、入院予約や検査説明などに際して多職種で入院患者さんを支援します。
1. 入院予約:入院予約された患者さんとの面談では入院前情報の収集と看護計画の立案、患者さんへの入院前オリエンテーションを行います。全室が個室対応で患者さんのプライバシーに配慮した対応が可能です。入院生活への不安を軽減できるよう、そして入院中も快適で安全に過ごしていただけるよう、患者さんを入院前から支援します。また、ケアマネジャー(介護支援専門員)との情報共有や病棟への重要な情報の早期提供など、シームレスな退院支援に繋げられるよう介入していきます。
2. 検査説明:多種多様になってきている検査を踏まえ、外来で検査予約された患者さんに、検査前の注意点や検査方法、内服薬などをより分かりやすく説明するように心がけていきます。
3. 今後の新しい役割:
・多職種による連携:退院後の生活を見据えて患者さんをチームで支えていきます。対象となる症例の手術患者さんに関して、術前から術後の回復に向けて、関係多職種が協働していきます。そのためにも新しい役割として「周術期管理センター(仮称)」との連携および協働を考えています。
・柔軟な支援体制:今回の感染症対応などを契機に普及しつつあるオンライン診療や附属病院で今後幅広く行われていく各種自由診療、遺伝子診療などのほか、特定行為研修修了看護師による外来指導、その他専門職による外来対応等に柔軟に応じられる場所となればと考えています。
今後、外来棟スペースの再整備の本格化や、HCU(高度治療室)の増設、診療科の再編成も予定されており、附属病院の更なる発展に向けてこのエリアを機能的に活用できるよう体制を整えていきます。
写真左 受付・待合、写真右 診察室1(グレードアップ)
1. 外来抗がん剤治療の強化:これまでの18床から28床へ増床し、年々増加する外来での抗がん剤治療のニーズに応えます。
2. 新型コロナウイルス感染症の感染対策:十分なソーシャルディスタンスを保ち、安心して治療が受けられる環境を整えました。新たな専用の個室や十分な広さを確保した待合室があります。
3. 抗がん剤治療をより安全に:新たに導入された中央モニタリングシステムの活用、治療中の患者さんの安全確認が行いやすいベット・チェアーの配置によってより安全に治療を提供します。診察室・処置室などがあり高度な治療・処置にも対応します。
4. 迅速でより正確な調剤:常駐する専門の薬剤師や新たに導入する調剤用ロボットの用で、より正確な調剤と薬剤の迅速な提供が可能となります。
5. サポートの充実:新たに設置した面談室を活用し、専門の薬剤師や看護師による副作用対策・指導が受けられます。栄養士による指導で栄養面のサポートも充実していきます。
6. 放射線治療部門との連携強化:がん治療において抗がん剤、放射線、手術といった異なる治療の組み合わせを行うことは非常に重要です。先端医療センターへの移転により、同じく規模が拡張された放射線治療部門と共同し、集学的ながん治療を提供することを目指します。
外来化学療法センター
1. 手術室の拡張:手術件数の増加に対応するため、新たに手術室4室が増設されました。そのうち3室はロボット支援手術における適応の広がりに伴い、ロボット支援手術に対応できる十分な広さのある手術室です。また内視鏡下手術、高度な血管内治療を可能としたハイブリット手術にも対応します。さらに大型の機材庫も整備され、大型化する様々な機材の収納も可能となりました。このような手術体制とともに高度な医療機器と複雑で細分化した手術材料の管理を強化し、精度の高い手術を提供するよう、そして一人ひとりの患者さんにとってより良質で安心な手術と安全が確保できるように努めていきます。
2. 周産母子センターとの連携強化:先端医療センター4階に設置される周産母子センターと直結の専用エレベータを設置し、緊急の帝王切開において最短の動線を確保しました。機能強化により、新生児医療提供の環境と連携が整いました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により2020年は一時的に手術件数が減少しましたが、一過性の現象と思われ、今後も手術数の増加が見込まれます。これまで以上に有効な手術室の運用を心がけていきます。
手術室(写真左 17号室・写真右 15号室)
これまで地下1階と1階に分散配置されていた設備がほとんど地下1階にまとまり、より良い放射線治療を効率的に提供できるようになりました。ほとんどの機器が更新され最新のシステムが導入されます。そして、放射線科外来が先端医療センター2階に移転し、同じ階の外来化学療法センターや緩和ケア外来の連携もさらにスムーズになります。
今後もがん診療連携拠点病院の腫瘍センターとしてさらに有機的に機能するようその役割を担ってまいります。
1. 医療機器について:
1)リニアック(外部照射装置):位置精度が向上し、患者さんの状態をモニタすることが可能となります。また、脳転移の定位放射線治療専用のシステムが導入されました。
2)治療計画CT:4次元CT(呼吸位相に合わせた高速スキャン)が可能で、精度の高い治療計画が実現できるようになります。また2種類のエネルギーの異なったX線を用いて放射線治療の線量分布の計算に必要な原子番号等の情報をより正確に取得できるようになります。これらの装置の導入により、本院で数多く行っている強度変調放射線治療、体幹部定位放射線治療などの高精度放射線治療が、今以上に正確に短時間で実施できるようになります。
3)RALS装置(密封小線源治療装置):今回の移転に伴い、CTが同室設置されました。体内での線源配置を今よりも簡単に、正確に確認でき(このような治療を画像誘導小線源治療と言います)、治療成績の向上、副作用の低減につながります。
(これらの治療の詳細やお問い合わせは、かかりつけ医にご相談ください。)
2. 放射線治療について:
放射線治療の目的は、がんの根治・再発予防・症状緩和までの様々なステージの患者さんを支えることです。その中で放射線療法は最後まで治療を受けること(完遂)が目標となるため、看護の役割も重視されます。患者さんのその人らしさを支えることを第一に、より良質な方策を考え看護を提供するよう努めていきます。
放射線治療室(リニアック治療室)
はんだ山の風第45号.pdf (2.9MB)