浜松医科大学医学部附属病院

本院について

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TAVI治療について(詳細)

 高齢化社会に伴い、心疾患のなかで、弁膜症、とりわけ大動脈弁狭窄症は爆発的に増加しています。重症の大動脈弁狭窄症は、胸痛、息切れ、失神などの症状がでると数年で死に到る進行性の病気で、従来、外科的人工弁置換術が唯一の延命効果のある治療とされていました。しかし、この病気は高齢者に多く、年齢や合併症などのためリスクが高くなり、手術を断念された患者さんが少なくありませんでした。手術と同じような効果を示す新しい治療法として開発された経カテーテル大動脈弁植え込み術(Transcatheter Aortic Valve Implantation : TAVI)は、手術に比べて体への負担が少ないため、このような患者さんでも治療が可能であり、海外では爆発的に症例数が増えてきています。ヨーロッパから始まり、2013年より日本でも保険償還され、当院では2017年より施行しています。

 TAVIは、胸をあけたり、人工心肺使用下の心停止状態を必要としたりしないため、外科的人工弁置換術に比べて手術ダメージがかなり低く、手術後の早期日常生活復帰を可能にします。外科的人工弁置換術に比べ、傷は小さく、手術時間も短い(約2時間)です。患者さんの体の負担は外科的人工弁置換術に比べて極めて低くなります。そのため日常生活への早期復帰を可能になります。


        

 重症大動脈弁狭窄症に対する治療が必要であるが、外科的人工弁置換術による死亡率や重大な合併症が起こる可能性が高いと判断された方にTAVIが適応となります。

・自力歩行が出来ないなどの体が弱った状態

・ご高齢の患者さん(概ね80歳以上が目安)

・冠動脈バイパス術などの開胸手術の既往のある方

・胸部の放射線治療の既往のある方

・肺気腫などの呼吸器疾患のある方

・1年以上の生存が期待できる悪性疾患を合併している方

・免疫抑制剤を内服されている方

・その他、外科的手術がハイリスクとなるような合併症のある方




 高齢のために体力が低下し、またはその他の疾患などのリスクを持っているため、外科的治療を受けられない患者さんなどが対象であり、治療実施の判断には詳細な検査が必要です。TAVI前の検査として血液検査、心電図、胸部レントゲン、呼吸機能検査、血圧脈波、心臓超音波、心臓CT、心臓カテーテル検査を必須として他に全身臓器機能検査を行います。検査の結果が揃ったら、ハートチームという心臓外科医・循環器内科医を中心としたカンファレンスでTAVIが可能かどうかを相談して、決定します。

 TAVIの問題がいくつかあります。大動脈弁置換術では石灰化した弁尖を切除して弁輪部に糸で人工弁を縫い付けます。ところが、カテーテル的大動脈弁置換術では弁尖を切除せずに、弁尖の内側からカテーテル生体弁を広げるため、残った弁尖が心臓を栄養する血管(冠動脈)を閉塞することがあります。その他の合併症として、大動脈弁輪・基部破裂、不整脈の出現によるペースメーカー留置、カテーテル生体弁周囲逆流などが大動脈弁置換術よりも起こりやすいです。手術中に適切に植え込めない場合には、胸骨正中切開による大動脈弁置換術に移行することもあります。また新しい治療法のためカテーテル生体弁の5年以上の長期耐久性についてはまだ不明であるという問題もあります。

 手術はハイブリッド手術室という特殊な手術室で行います。ハイブリッド手術室とは、従来の胸を開ける手術と放射線透視下でのカテーテル操作による治療を併用して行う専用手術治療室のことです。カテーテル用に開発された生体弁を小さく折りたたんでカテーテルに装填し、このカテーテルを大動脈弁のところまで進め、カテーテル生体弁を広げます。テーテルは主に鼠径部の血管 から挿入します。結果的に患者さんの石の塊 (石灰化)になった大動脈弁は外側に押しつけられ、カテーテル生体弁がこの外側に押しつけられた大動脈弁に引っかかり固定されます。

 TAVIが終わった後は、集中治療室に入り、合併症がないかどうか経過をみます。合併症がなければ、1~2日で一般病棟へ移ります。患者さんの体の負担は極めて低いため、食事や歩行などは早期に可能となります。入院期間は2週間程度です。

 TAVIの相談については、かかりつけの病院・クリニックから浜松医科大学附属病院の循環器内科(前川、大谷、佐藤)、または心臓外科(椎谷、鷲山)の外来へご紹介ください。血液検査、心電図、胸部レントゲン、呼吸機能検査、血圧脈波、心臓超音波、心臓CT、心臓カテーテル検査といった術前検査の入院を予定します。検査の結果が揃ったら、心臓外科医・循環器内科医を中心としたカンファレンスでTAVIが可能かどうかを相談して、決定します。