浜松医科大学医学部附属病院

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TAVI治療について(詳細)

1. 大動脈弁狭窄症について

 大動脈弁は心臓の左心室から全身へ血液を送り出す役割を果たします。加齢や動脈硬化などによりこの弁が硬くなり、開きにくくなることで心臓が十分な血液を送り出せなくなる病気が「大動脈弁狭窄症」です。
主な症状は次のようなものがあります。
● 息切れ(階段の昇り降りや運動時)
● 胸痛(特に動いたとき)
● めまい・失神(血流が悪くなるため)
● 動悸や疲れやすさ
 大動脈弁狭窄症は、年齢とともに症状が進む進行性の病気であり、そのまま放置すると心不全のリスクが高まるため、早期の発見と治療が大切です。重度になると再入院や身体的な機能低下が段々とみられるようになり、平均余命が2~3年と言われています。

2. TAVI(経カテーテル大動脈弁置換術)の有用性について

 かつては、大動脈弁狭窄症を治すには胸を大きく開ける手術、外科的大動脈弁置換術(SAVR)しかありませんでした。しかし、高齢で体力がない方や、他の病気がある方にとっては、手術の負担が大きすぎることが問題でした。そこで開発されたのが経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)です。
TAVIは、足の付け根の血管(大腿動脈)などから細い管(カテーテル)を入れて、そのカテーテルを通して人工の弁を心臓まで運び、狭くなった大動脈弁の場所に留置する治療法です。胸を切らずに治療できるため、患者さんの体への負担がこれまでの外科手術に比べて少ないのが特徴です。

3. TAVIのメリットとデメリット

 メリット(期待される効果)
✅ 開胸手術をしないため、体への負担がこれまでの外科手術に比べて少ない
✅ 高齢の方や手術リスクが高い方でも受けられる可能性がある
✅ 患者さんの状態により異なりますが、外科手術に比べて術後の回復が比較的早く、入院期間が短くなることが多い
 デメリット(リスク・合併症)
☑ 血管損傷・出血(カテーテルを入れる際に血管を傷つける可能性)
☑ 脳梗塞・血栓塞栓症(カテーテル操作中に血栓が飛ぶことがある)
☑ 弁周囲逆流(人工弁の圧着不良で弁周囲に逆流が生じる)
☑ ペースメーカー植え込みが必要になることがある(術後に不整脈が起こることがある)
☑ 腎機能障害(治療実施前には詳細な検査が必要となり、造影剤を使用するため腎臓に負担がかかる可能性)
☑ 長期の成績が不明である(10年以上の耐久性のデータがない)

4. TAVIの流れ

① 検査(術前評価)
TAVIが適応となるかを判断するため、以下の検査を行います。
● 心エコー(超音波):心臓の弁の機能を確認
● CT検査:血管の状態、弁の大きさや形を評価
● 血液検査:腎機能や感染症の有無を確認
② 手術当日
1. 局所麻酔または軽い全身麻酔を行います
2. カテーテルを挿入(主に足の付け根の血管から)
3. 人工弁を設置し、動作を確認
4. カテーテルを抜き、止血処置を行う
  手術時間は約1~2時間
③ 術後の管理とリハビリ
● ICUまたはHCUで1日経過観察
● 術後7日で退院可能な場合が多い
● 定期的な診察やエコー検査が必要

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⓵鉛筆ほどの太さに折りたたまれた生体弁を装着したカテーテルを、太もも
の付け根の1㎝弱の小さな穴から大腿動脈にいれて、心臓まで運びます。
⓶生体弁が大動脈弁の位置に到達したらバルーン(ふうせん)を膨らませ、生体弁を広げ、留置します。
⓷生体弁を留置した後は、カテーテルを抜き取ります。
④生体弁は留置された直後から、患者さんの新たな弁として機能します。
(※ ①‐④イラストとテキスト提供:エドワーズライフサイエンス㈱ )

5. TAVIと他の治療法の比較

治療法 侵襲性 回復時間 適応 主なリスク
経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI) 低侵襲(カテーテル治療) 1週間程度で退院 手術リスクが高い方(高齢者・基礎疾患あり) 血管損傷、弁周囲逆流、ペースメーカー植え込みの可能性

外科的大動脈弁置換術(SAVR)

開胸手術

約2~3週間で退院

若年者・外科手術に耐えられる方

出血、感染、長いリハビリ期間

薬物療法(対症療法) なし - 症状が軽い場合や手術ができない場合の選択肢 症状を緩和するが、根本症状が軽い場合や手術ができない場合の選択肢治療にはならない

6. TAVIを受ける際の注意点

✅ 術前・術後の注意事項
● 血液をサラサラにする薬(抗血栓薬)の継続が必要
● 定期検査を受けることが重要(人工弁の機能確認)
● 生活習慣の改善も大切(高血圧・糖尿病の管理など)
✅ TAVIが適応にならない場合
● 血管が痛んでいたり、細すぎる場合(カテーテルが通らない)
● 感染性心内膜炎の既往がある場合
● 他の重篤な疾患がある場合(重度の肺疾患・がんなど)

7. よくある質問(Q&A)

Q1. TAVIを受けた後、普通の生活に戻れますか?
A. はい。患者さんの症状により異なりますが、多くの方が術後数日で回復し、病状に合わせたリハビリを実施したのち退院、日常生活に戻れます。ただし、重い荷物を持つなどの負担は避け、無理のない範囲で活動を再開してください。
Q2. TAVIの人工弁はどれくらい保ちますか?
A. 一般的に10年程度とされています。定期検査で弁の状態を確認し、必要があれば再治療を検討します。また、患者さんの毎日の健康管理も大切で、体重の著しい増減、体調に気になる症状があったときは、定期検査を待たずに受診してください。
Q3. 手術後に特別な食事制限はありますか?
A. 特別な制限はありませんが、塩分を控えめにし、バランスの良い食事を心がけましょう。
Q4. TAVIとSAVR、どちらが良いですか?
A. 患者さんの年齢・全身状態・病状によって異なります。医師と相談のうえ、より適した治療法を検討してください。

8. まとめ

 TAVIは、大動脈弁狭窄症に対する低侵襲な治療法であり、高齢の方や手術リスクが高い方に有効な選択肢の一つです。しかし、リスクもあるため、医師とよく相談し、ご自身により適した治療法を検討することが大切です。実施には、詳細な検査を実施し、その結果をもとにハートチームという心臓外科医・循環器内科医を中心としたカンファレンスで、従来の胸を開ける手術とTAVIのどちらがより適しているのかを、相談して方針を決定します。
 本院は、経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会(THT協議会)が認定するTAVR専門施設であり、より高度な実績と体制を備えた医療機関です。


 20260629 mv1TAVI2017画像(明るさ調整).jpg(写真: TAVI治療の実際)
       

お問い合わせ

 本院は外来受診予約制です。手術リスクが高くて難しいと言われた方は、TAVIについて、主治医と相談してみてください。TAVIを含めた心臓弁膜症に関する相談については、かかりつけの病院・クリニックから、本院地域連携室を通して循環器内科(前川、大谷)、または心臓外科(鷲山)の外来へご相談ください。