浜松医科大学医学部附属病院

本院について

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ロボット支援下手術(泌尿器科)

 泌尿器科では平成27年(2015年)11月よりロボット支援手術を開始しており、令和7年(2025年)3月時点で1,222例の患者さんにロボット支援下手術を施行しました。現在、保険診療で実施可能なロボット支援下根治的前立腺全摘除術、ロボット支援下腎部分切除術、ロボット支援下膀胱全摘除術およびロボット支援下腎盂形成術に加え、令和4年(2022年)4月より新たに保険収載されたロボット支援下根治的腎摘除術、ロボット支援下腎尿管全摘除術およびロボット支援下副腎摘除術を施行しています。
 また、従来より本院で導入している米国社製da Vinci Xi(ダビンチXi)2台に加えて、令和4年(2022年)4月からは国産初の手術支援ロボットであるhinotori(ヒノトリ)が1台加わり、これら計3台の手術支援ロボットが現在稼働中です。

 本院で現在施行している各術式の概要を以下にご紹介させていただきます。



ロボット支援下根治的前立腺全摘除術

 平成27年(2015年)11月に第1例目の手術を施行して以来、令和7年(2025年)3月時点で当科での手術症例は479例に至りました。ロボット支援下根治的前立腺全摘除術の手術時間は3~4時間で、実際にロボットを操作している時間は2~3時間です。標準的な入院期間は約2週間です。従来の開放手術による前立腺全摘除術に比べて、出血量が少なく低侵襲に手術が行えるという大きな利点に加えて、術後の尿失禁や性機能不全等の合併症が改善されるなど、良好な成績が得られています。このことは排尿や性機能に関わりの深い神経血管束という組織を温存する手技を積極的に取り入れていることによると考えられます。今後も、がん制御のみならず術後のQOLに直結する機能的成績の改善を目指した手技を充実させることに努めていきます。

ロボット支援前立腺全摘除術(術部の様子)             ロボット支援下根治的前立腺全摘除術(術部の様子)

ロボット支援下腎部分切除術

 当科では平成28年(2016年)4月に静岡県下では第一例目となるロボット支援下腎部分切除術を施行し、その後令和7年(2025年)3月時点で439例の患者さんに同手術を施行しました。ロボット支援下腎部分切除術の手術時間は2~3時間で、実際にロボットを操作している時間は1~2時間です。標準的な入院期間は約10日間です。当科ではCT画像を立体的に再構築して腫瘍や血管の位置関係を見やすくした画像をリアルタイムで見ながら手術をすることができる術中ナビゲーションシステムを構築しました。そのシステムを利用することにより、従来は腎摘除術を選択せざるを得なかった難易度の高い腫瘍に対しても、ロボット支援下に部分切除術を施行することを可能としています。また、腎部分切除の手術結果の指標となる3つの重要項目の達成度(成績)を一層高めるとともに、高い手技の充実と手術の提供に努めています。

ナビゲーション手術の実際

                   ナビゲーション手術の実際

ロボット支援下膀胱全摘除術

 当科では、令和7年(2025年)3月時点で128例の患者さんにロボット支援下膀胱全摘除術を施行しました。従来の開放手術では輸血が必要となる割合も高く、非常に侵襲が大きい手術でしたが、ロボット支援下手術は開放手術に比し体の負担が軽いため、比較的早期に社会復帰が可能となります。また、膀胱摘出後の尿路変向の選択肢として尿管皮膚ろうに加えて体腔内回腸導管造設および体腔内新膀胱造設術にも対応しており、個々の患者さんの病状に合わせた提案をしています。当科におけるこれまでの施行例ではいずれも開放術式よりも低侵襲に手術を行っており、今後も積極的に本手術を施行していく予定です。

ロボット支援下腎盂形成術

 令和2年(2020年)4月に新たに保険収載され、当科では令和7年(2025年)3月時点で22例の患者さんに同手術を施行しました。自由度の高いロボットアームを使用することで、従来の腹腔鏡下手術と比較して、より繊細かつ正確な縫合操作が可能となったことが最も大きな特長です。もともと対象症例が多くはない術式ですので、今後も着実に症例を重ねていくなかで、ロボット手術の利点を生かした治療の提供に努めていきます。

ロボット支援下根治的腎摘除術

 令和4年(2022年)4月に新たに保険収載された術式で、当科では令和7年(2025年)3月時点で105例の患者さんに同手術を施行しました。本術式を従来から広く行われてきた腹腔鏡下根治的腎摘除術および開放根治的腎摘除術と比較してみると、まず腹腔鏡手術との比較では、手術支援ロボットの自由度の高い操作性により大血管周囲および腎門部において従来より精密な剥離操作を可能にしています。加えて開放手術との比較では、患者さんへの身体的負荷が少ない低侵襲手術であるうえに、出血量が少なく、合併症および入院期間の短縮などが特長です。今後は本術式が急速かつ広く普及していくものと考えられ、本院でも積極的に本術式を取り入れていきます。

ロボット支援下腎尿管全摘除術

 令和4年(2022年)4月に新たに保険収載され、当科では令和7年(2025年)3月時点で30例の患者さんに同手術を施行しました。本術式におきましては、本院におけるこれまでのロボット支援下腎部分切除術およびロボット支援下根治的腎摘除術の経験を適所で活かすことが可能となっておりますので、今後も安全に留意して着実に症例を重ねるとともに、より多くの患者さんの治療の選択肢の一つとなるよう努めていきます。

ロボット支援下副腎摘除術

 令和4年(2022年)4月に新たに保険収載され、当科では令和7(2025年)3月時点で31例の患者さんに同手術を施行しました。これまでも本院ではホルモン産生副腎腺腫および副腎皮質/髄質由来腫瘍を専門的に扱う内分泌内科と連携のうえ腹腔鏡下手術に積極的に取り組んできました。この経験にロボット手術のノウハウを重ね合わせることで、より多くの患者さんの治療の選択肢の一つとなるよう努めていきます。

国産手術支援ロボットhinotoriを用いた術式

 当科では令和4年(2022年)3月から国産手術支援ロボットhinotoriを用いた術式を導入しています。4本のロボットアームを天吊りするマルチアームおよびクローズド型のサージョンコックピットを有しており、従来の米国製ダビンチ Xiと同様の構成となっていることから、ダビンチと同様の操作感のもと、同じ領域を対象に同じ手順での施術が可能です。実際に、上記でご紹介したすべての泌尿器科術式において、当科ではダビンチだけでなくhinotoriを用いた施術が可能となっています。

20250617 mv1最新医療(ロボット泌尿器詳細)ヒノトリ.png 国産手術支援ロボットhinotoriのオペレーションユニット



 これらのロボット支援下手術に関しては、術式の利点とともに、いくつかの留意点等もありますので、診療についての詳細はかかりつけ医へご相談のうえ、当科へお問い合わせをお願いいたします。