浜松医科大学医学部附属病院

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ロボット支援下手術(肝・胆・膵外科)

 私たちは、患者さんへのより良い治療を提供するとともに、より適した治療法を開発するための研究を進めています。その一環としてロボット支援下手術にも積極的に取り組んでいます。令和2年(2020年)4月から膵腫瘍に対するロボット支援下膵体尾部切除術が保険適用となり、本院でも同年12月から同手術を導入しました。
 現在、保険診療で実施可能なロボット支援下膵体尾部切除術について、概要を紹介させていただきます。

ロボット支援下膵体尾部切除について

 膵臓は胃の後ろ側にある、長さ20cmほどの左右に細長い臓器です。十二指腸に近い側のふくらんだ部分は膵頭部といい、十二指腸に接しています。脾臓に近い側の幅が狭くなっている部分は膵尾部といい、脾臓に接しています。膵臓の真ん中は膵体部といいます。脾臓に近い側の膵体尾部にできた膵臓がんなどの悪性腫瘍に対しては、膵体尾部と脾臓・周囲のリンパ節を切除します。脾臓そのものにがん細胞が転移することはまれですが、周囲の血管やリンパ節を切除すると、脾臓を残しても壊死してしまうため、一緒に切除します。良性腫瘍の場合、可能なら脾臓は温存します。十二指腸に近い側の膵頭部にできた腫瘍に対しては、膵頭十二指腸切除という手術を行います。
 従来、膵臓の手術は開腹手術で行われることが多かったのですが、平成28年(2016年)から膵臓がんに対する腹腔鏡下膵体尾部切除術が保険適用になったため、国内でも腹腔鏡手術件数が増加しています。腹腔鏡手術は1cm程度の細いビデオカメラをお腹の中に挿入し、ビデオモニターにお腹の中の様子を映し出します。腹腔鏡手術では、ポートと呼ばれる1cm程度の細い管から器具を出し入れして手術を行います。傷は複数箇所にできますが、最も大きな傷でも6cm程度、合計でも10㎝程度です。開腹手術では15~20㎝くらいの傷になるので、腹腔鏡手術の方が痛みは少なく、手術後の回復も早いです。開腹手術では手術翌日に歩ける方は少ないですが、腹腔鏡手術ではスタスタと歩ける方もいらっしゃいます。手術中のメリットとしては、高解像度のカメラで拡大して観察することができるため、細かい操作が可能で、開腹手術よりも出血が少ないと言われています。また、手術に参加している医師が共通のモニターを見ながら手術を行うため、教育効果も高いと言われています。腹腔鏡手術のデメリットとしては、大きく臓器を動かすことができないため、手術時間は長くなります。腹腔鏡手術は一般的に低侵襲手術といわれ、体の負担が少ないとされています。一方で、心臓や腎臓が悪い方には、長時間の腹腔鏡手術の方が、短時間の開腹手術よりも負担が大きくなってしまうこともあるため、慎重に適応を判断する必要があります。
 令和2年(2020年)4月からはロボット支援下膵体尾部切除術も保険適用となり、本院でも同年12月に第1例目の手術を行い、これまでに5例実施しています。ロボット支援下手術と腹腔鏡手術では、傷の大きさはほぼ一緒です。ロボット支援下手術では、腹腔鏡よりも鮮明で手ブレのない3Dハイビジョン画像を見ながら手術を行うことが可能です。また、腹腔鏡手術では細長い棒状の器具を使用するために、どうしても動作制限が生じますが、ロボット支援下手術では人間の指や手の動きと同じような高い自由度を持った関節機能があるため、より精緻な手術を行うことが可能です。腹腔鏡手術とロボット支援下手術の優劣について、これまでにいくつか報告されており、ロボット支援下手術の方が手術時間は長くなるものの、在院期間は短かったとされています。開腹手術と比較すると、ロボット支援下手術の方が在院期間は短く、合併症率も低かったとされています。静岡県内では、ロボット支援下膵体尾部切除術を保険診療として実施できるのは数施設に限られます。これらの診療についての詳細は、かかりつけ医へご相談のうえ、当科へお問い合わせをお願いいたします。(本院は外来受診予約制を導入しております。)

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