浜松医科大学医学部附属病院

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難病診療連携コーディネーターからのお知らせ

令和5年度第3回難病医療従事者講習会(WEB配信)

令和5年11月から令和6年1月まで医療従事者を対象とした、第3回難病医療従事者講習会(WEB配信)を開催致しました。

講師の平野美佳子先生に質問があり、回答を頂きましたので掲載致します。nurse_shortcut.png

        意思決定支援に携わる「私たち」をケアする
        ―納得感を生み出す意思決定支援カンファレンスを創ろう!―
        講 師:訪問看護ステーション浜松早出・訪問介護ステーション浜松
            管理者 緩和ケア認定看護師・公認心理師 平野 美佳子 先生

  • 質問

意思決定支援のカンファレンスは本当に難しく、一歩引いてしまいます。いつも感じるのは本人の希望より、家族の希望が強く感じられてしまうのも、自分の認知バイアスなんでしょうか。医療者も家族も、患者もそれぞれの思いもあり、倫理観もあり、それぞれが異なるのも理解しているつもりですが、みんなで納得できるのはまだ自分の力量では足りず参加者にもやもやが残ると今回のお話を聴いてより強く思いました。もっと家族や患者が発する言葉の裏にある思いを知るような話を持てるようにするにはどうすればいいのでしょうか?

  • 回答

 ご質問、ありがとうございます。

 意思決定支援... 本当に難しいと思います。関わりを持つそれぞれの方々の想いを汲み取ってまとめようとすると、心身共に消耗しますよね。

 ご質問の内容、1つ1つお答えさせていただきます。

① 本人の希望より、家族の希望が強く感じられてしまうのも、自分の認知バイアスなんでしょうか。

⇒ ケースの詳細が分からないので、的外れな回答でしたらすみません。

状況によっては、もしかしたら認知バイアスが働いているのかもしれません。

認知バイアスは必ずしも「悪」ではなく、膨大な情報量を素早く処理できたり、人間の脳への負荷を軽減できたりするので、知らず知らずに働いてしまうものです。ただし、粗雑に情報を処理しようとするために事実を捻じ曲げたり、都合よく解釈したりしてしまうことで、認知が歪み、合理的でなくなることが多かれ少なかれ生じてきます。

 では、なぜ家族の希望が強く感じられてしまうのか...です。

 私たちは「患者」ではないので、その方の立場に立って考えるという行動をとろうとすると、「患者」より「家族」の立場の方がより理解しやすいという傾向はあるのかもしれません。痛みや苦しみはその方にしかわからないものです。ただ、その苦しみや痛みを傍らで支え続ける家族のつらさの方が自分に置き換えて考えやすいのではないでしょうか。理解しやすいからこそ、家族の希望について考えることが多くなり「強く感じてしまう」という感情になるのかもしれません。

しかし、家族の希望(訴え)が本人よりも多かったり、主張が強かったりすることは往々にしてあることです。それはその意思決定が自分のことではないからです。病気による苦しみは本人しかわかりません。ただ、ご家族は「家族だから」とその苦しみを理解して決めていかなければならない重責、葛藤を抱えます。その反面、自分自身の生活やこれからの人生も守りたいという思いもあるでしょう。さらには、患者本人のことよりも自分の生活を守りたいと思ってしまうことへの自責の念に苦しむこともあるでしょう。また、ご家族は、本人亡き後にも生き続けていかなければならないので、その決断に後悔したくないという気持ちも強くあります。それから、近しい家族以外の親族や友人がいろいろな情報を持ち込んで、外野からやいのやいの言われるというケースも少なくありません。そう考えると、一番苦しいのは実はご家族だったりするのです。その苦しさが「ご家族の希望の強さ」につながってしまうのだと思います。だとしたら、これは医療者側のバイアスではないと考えます。

② もっと家族や患者が発する言葉の裏にある思いを知るような話を持てるようにするにはどうすればいいのでしょうか?

⇒ カンファレンスの場だけで、相手の言葉の裏側を知ることはなかなか難しいと思います。

 看護師の役割は意思決定の「判事」ではなく「擁護者」ですので、そのための事前準備(コミュニケーション)は必要かと思います。私が事前準備段階のコミュニケーションとして心がけていることは、大きく分けて2つあります。

 まず1つは、「今」に焦点を当てすぎないことです。「今」の状況(感情)を生みだす要因は「過去」にあると考えるからです。夫婦、きょうだい、親子...どのような過去(関係性やお互いに対する想い)があって今があるのかというところを、意思決定の本題に入る前に知っておけると良いと思います。例えば、ご家族と患者との思い出話に耳を傾ける中から、お互いをどう理解しているのかを把握していけると良いのではないかと思います。そして、思い出話に相槌を打ちながら、「○○さんは××さんのことを~のように思っているのですね」と、自分の受けた認識を確認できると、バイアスに影響されにくいと思います。

 もう一つは、対象となる方の過去のコーピングスタイルを知ることです。今までに何をどのようにして意思決定してきたのかの話をうかがうことで、一般的にいう「問題解決型」なのか「情動中心型」なのかというだけではなく、どんな価値観を持って、何を優先して物事を決めてきた方なのかが分かります。例えば、結婚、離婚、起業、転職、退職など、人生の転機となる時にどう考えて決断したのか、またつらい出来事があった時どう乗り越えて来たのか等をうかがっていきます。

 これらの2つのアプローチから、ケア対象者それぞれの価値観を感じ取り、言葉の裏側を読み取るように努めています。並行して危機理論のどの段階にあるのかなども考えながら気持ちの揺らぎも捉えていけると良いかなと思います。

医心館訪問看護ステーション浜松早出 

平野 美佳子


平野先生ありがとうございました。

来年度も引き続き、WEB配信での難病医療従事者講習会を開催予定です。

多くの方のご参加をお待ちしております。



在宅人工呼吸器装着患者さんの調査

 災害時に備えて県内の訪問看護ステーションに協力をお願いをし、小児も含めた在宅人工呼吸器(侵襲的・非侵襲的呼吸器)を装着している方、外部バッテリーや発電機の所持状況を調査しました。

 この調査により、人工呼吸器を装着されている方のバッテリーや発電機の所持率が100%ではないことが分かります。非常時の電源確保は、人工呼吸器装着者は必須であるため、電源確保の支援・調整をすすめる必要があります。


研修会報告                  

※平成24年以降の研修会・活動については、難病ニューズレターに掲載しています。