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妊娠・出産・新生児に係る周産期は、次世代の育成において極めて重要度の高い医療領域で、日本の医療レベルは現在世界最高水準にあります。しかし、この日本の周産期医療が産科医、小児科医不足により崩壊の危機に直面しており、女性が安心して出産できる環境が脅かされ、大きな社会問題となっています。
静岡県は人口約358万人で出生数は約2万3千人ですが、全県にわたり周産期医療に携わる医師、すなわち新生児特定集中治療室(NICU)に勤務し新生児の診療を行う新生児科医師あるいは分娩を取り扱う産婦人科医師が恒常的に不足しています。
浜松医科大学は静岡県唯一の医科大学であり、静岡県内の中核病院へ新生児科医師あるいは産婦人科医師を派遣していますが、未だ需要を満たしているとは言えません。このような状況を改善し、静岡県の周産期医療を再活性化するため、2012年1月に静岡県からの寄附講座として当講座が開設されました。
当講座では、①医学科学生および卒後初期研修医に対して卒前臨床教育と一貫性を持たせた初期研修プログラムの提供、②専攻医に対して小児科および産婦人科研修プログラムの一環としての新生児診療研修の提供、③サブスペシャリティとして周産期医療を選択した医師に対して周産期(新生児、母体・胎児)専門医資格取得の支援、④周産期専門医等の周産期医療施設への派遣、定着促進に取り組んでいます。
これまでの実績として、2022年度までに30名(新生児13名、母体・胎児17名)の若手医師が周産期専門医研修を開始し、20名(新生児6名、母体・胎児14名)が専門医資格を取得しています。また、高度な知識や技術を持つ周産期専門医の総合周産期母子医療センターへの配置、3か月以上の新生児診療研修プログラムを終了した専攻医および若手医師の地域周産期母子医療センター、産科救急受入医療機関、一次産科医療施設への派遣を行い、県内周産期医療体制の充実に貢献しています。
さらに、県内の周産期医療レベル向上を目的として、①新生児蘇生法講習会、②周産期医療講演会、③新生児症例検討会の開催、静岡県周産期新生児研究会の共催も行っています。