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学長メッセージ

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 浜松医科大学は開学49年になります。卒業生は昨年度までに医学科4,522名、看護学科1,697名に達し、地域医療のみならず、全国の医療の現場や研究分野、行政関係などで活躍しています。私は学長として8年目を迎えますが、初年度より一貫して運営の指針を建学の理念に置いてきました。本学は来年度開学50周年を迎えますが、「優れた医療人を育成し、独創性のある研究成果を世界に発信し、地域医療を中核的に担う」と謳っている建学の理念は、医療や看護の高度化、専門化が顕著な現代でも、聊かも揺るがない大学運営の羅針盤と言えます。
 さて、国立大学の法人化から19年経ち、第4期中期目標期間の2年目に入っています(中期目標期間は6年単位)。本学は単科医科大学ですので、教育、研究、診療、産学連携に分けて概説します。
 
 教育においては、この7年間入試改革と共に教学改革を進めてきました。入試においては、個別入試の比重を高め、面接にプレゼンテーションを実施し、「記憶力」から「論理的思考力、判断力、表現力」へという国の方向性を先取りしてきました。学部教育においては、令和3年度に抜本的な医学科カリキュラム改革を実施しました。新カリキュラムでは、学位授与基準にも明示している、豊かな人間性と高い倫理観に基づく共感力、コミュニケーション力等を身に付けるため、倫理学と心理学等の行動科学の修学を学部教育全般に渡って行います。さらに、国際性の観点だけではなく、異文化や人種等の多様性の理解に必須である英語の修学にも焦点を当てています。奇数学年時の全学生に課しているTOEIC受験に加え、医学科ではeラーニングからスタートし、英語での症例プレゼンテーションや海外での臨床実習など、6年間英語教育を継続し、卒業時に英語で医学や医療の討論ができる語学力を形成します。ネイティブの専任教員を3人配置すると共に、平成31年度設立の国際化推進センターの機能を拡充し、本学及び海外からの学生の利便性を向上させ、一層の国際教育、国際的学術交流を推進しています。
 さらに、引き続き高度な能力を備えた専門性の高い医師、看護師を育成し、患者さんの価値観や特性など多様性を理解し、他職種と連携しながら患者さんの意思を尊重した最善の医療を提供できる医療人を育成します。加えて、研究熱心で未知の生命現象の解明や疾患の克服等につながる重要な研究成果を世界に発信できる独創的な医学・看護学研究者を養成するとともに、既存の学術領域を超え、新しい医療技術を社会実装するなど、社会の課題に挑戦するアントレプレナーシップ(起業家精神)を持った人材の育成を目的として、数理・データサイエンスの修学に加え、令和4年度からアントレプレナーシップの修学を単位認定した正式なカリキュラムとしました。
 大学院教育においても、医学系研究科では海外の学生を含め常に定員以上の応募があり、優れた大学院生の確保が可能となっています。また、令和4年度から看護学専攻博士後期課程がスタートしました。博士前期課程では老年看護と精神看護の高度実践看護コースも開設し、専門看護師、認定看護師など、先進医療にコミットできる多様な看護師を育成していきます。 

 研究面では、常勤教員当たり研究業績数や科研費獲得額・件数は国立大学でも常に上位に位置しています。本学の強みである光医学研究に関する最新の研究機器と高度な技術スタッフや蓄積したノウハウからなるイメージングコンプレックス体制を活用し、様々な成果を上げてきました。今年度には、本学の研究を更に尖鋭化させ、光応用医学、領域横断的な先端医学研究を展開することを目的とした新たな研究所を設置する予定としています。本研究所の設置により、医学と工学、医学と情報学などの分野融合的研究を、組織的に、戦略的に行う体制が強化されます。
 光医学研究をさらに推進するとともに、こころの病や遺伝性疾患など、未解明の課題に対して基礎研究者、臨床研究者が一体となって取り組み、治療法の開発につなげ、また、工学・情報学等の他分野の知見を取り入れながら特色ある領域横断的研究を推進し、同時に新しい医療技術・システムの開発やビッグデータ解析により、心身ともに健康な社会の創成を目指します。そのためにも、次世代の中心となる有望な若手研究者支援など戦略的な研究支援についても引き続き力を入れていきます。
 さらに、地域における産学官連携を深化させるために、産学連携・知財活用推進センターを設置し、民間企業、大学間、行政、金融、基幹病院との連携を強化しています。令和4年度から次世代創造医工情報教育センターを開設し、社会の課題に挑戦できるデザイン思考やアントレプレナーシップの素養を持つ学生及び社会人を養成し、医工連携を推進し地域にメディカル・イノベーション・エコシステムを形成することができる人材育成を実施しています。加えて今年度には、地域創成人材養成センター(仮称)を設置し、行政と連携し防災・救急等に関する課題解決を図っていきます。

 診療においては、令和3年度に附属病院先端医療センターが完成し、手術室が増設され、最新の放射線治療、さらには化学療法センター、光学医療(内視鏡)診療部、NICU(新生児特定集中治療室)、GCU(新生児回復期治療室)の業務拡大に対応することが可能となりました。また、病棟も臓器別の病棟再編及び臓器別センターの設置を行い、患者さんの利便性や診療効率、病床運用効率の向上、診療協力体制を強化しました。
 卒後教育の充実にも積極的に取り組んでおり、卒後教育センターでは、初期研修から専攻医研修まで一貫した支援を行っています。さらに看護キャリア開発センターでは、チーム医療の促進のために医療安全のもと特定行為を行う看護師の育成や、認定看護管理者の育成を行っています。このような取り組みにより、医療・看護の質の向上に繋がると期待しています。
 さらに、浜松市スーパーシティ構想等も踏まえた医療のデジタル・トランスフォーメーションを促進します。情報技術の活用によって安全で高度な医療を提供し、医療の質や患者さんの利便性を向上させるとともに、院外からの電子カルテ利用体制構築による医療情報の共有化などをはじめ、近隣医療機関等との連携により集約化・機能分化を推進し、災害や新興感染症発災時においてもレジリエント(強靭)な医療ネットワークを構築することで、持続可能な健康社会の創出を目指します。
 また、看護師をはじめ、多様なメディカルスタッフの質的向上によるタスクシフト(従来、ある職種が担っていた業務を他職種に移管すること)に取り組み、医療従事者の働き方を改革します。
地域医療への貢献の面でも、西部地区のみならず、静岡県全体の医療の主導的な役割を担っています。既に静岡県の勤務医の約3割を本学卒業生等、医局関係者が占めており、600床以上の大病院3施設を含め、30人近い病院長を輩出しています。そのほかにも、日本医師会長、県医師会理事や市町の医師会長、県や市町の医療行政の幹部として本学関係者が活躍しています。ここ数年では医学科卒業生の半数以上が県内で種々の職に就いており、全国的にも地元定着率が極めて高い大学です。
 さらに本学の強みの一つである産学官連携を強化し、革新的な技術の創出とベンチャー企業の育成等により医療を基盤とした産業創出を目指すとともに、地方創生・価値創造の中核として、地域や他大学と連携し、インクルーシブで持続可能な「ウエルネス社会」の創出に貢献します。
 今後も、関係者の皆様との対話により本学に期待される機能や役割を理解し、外部有識者の助言をいただきながら、調査研究を充実させ、原則として客観的な指標に基づく大学運営を行います。また、国からの運営費交付金以外の多様な財源の確保を図り、資産運用等の拡大により安定的な財務運営に努めます。さらに、施設・設備整備を通じて、地域医療を支える附属病院の機能強化はもちろんのこと、高度な情報技術も組み合わせ、キャンパス全体が有機的に連携し、学内のみならず、地方公共団体、産業界、他の教育研究機関等との共創の拠点(イノベーション・コモンズ)となるよう取り組みます。
 一人一人が自らの責務を果たす中で、自らの夢を持ち、自らが描くキャリア形成を自律的に実現する、それが結果的に本学の持続的な成長に繋がる、そんな組織でありたいと願っています。

         令和5(2023)年 5月
学 長  今 野 弘 之
(KONNO Hiroyuki)