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未熟児網膜症 (ROP:Retinopathy of prematurity)

概念

早産児の未熟な網膜を基盤として、さまざまな要因が加わり発症する血管増殖性病変です。

原因

根本的な原因は網膜血管の未発達性にあります。網膜の血管は、胎内での発達期に視神経から眼底周辺部へと延びていき、正常な満期産の出生時にはほぼ眼底周辺部に達します。しかし、早産で生まれると、網膜血管の発達は道半ばで周辺までは達していません。それにさまざまな条件が加わることにより、網膜血管が正常な発達を逸脱して網膜症が発症します。網膜の血管の発達に関わる成長因子(血管内皮増殖因子:VEGF)が未熟児網膜症の悪化に関わっていることが明らかになっています。在胎週数、出生体重が少ないほど起こりやすいのは当然ですが、酸素投与、交換輸血なども重症化の要因になります。

症状

網膜血管が達していない部分を無血管帯といいますが、無血管帯との境目に血管の異常な増殖が起こります。多くの場合、それは自然に解消して再び血管は周辺部へと延びていきます。しかし、時には線維血管増殖へと発展し、やがてそれが収縮すると網膜が引っ張られたり、網膜剥離になったりして重症化します。

診断

生後3週(もしくは在胎週数が26週未満では修正29週目頃)より眼底検査が開始され、多くの場合、保育器に入ったままでの検査を行います。病期の分類には厚生労働省分類と国際分類があり、徐々に増悪するタイプと急速に増悪するタイプに分類されます。

治療

発症しても多くの場合は自然治癒しますが、一部のより未熟性の強い児では増悪して治療を要する場合があります。治療はアルゴンレーザーによる光凝固術が主体ですが、病態によっては冷凍凝固術も行われます。近年、未熟児網膜症の悪化に関わる成長因子(VEGF)を抑制する薬を眼の中に注射する治療法(抗VEGF薬硝子体腔内注入療法)が行われ始めています。網膜剥離に至る一部の重症例では強膜バックリング術、あるいは硝子体手術も行われます。