教育

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研究活動

脳組織において「見えなかった分子の動き」を可視化する

シナプス伝達を典型例とするように、精緻(ナノメートルスケール)かつ動的(ミリ秒スケール)な分子ダイナミクスが脳機能を担っています。そしてそのダイナミクスのわずかな変調が疾患の原因となります。さらに分子ダイナミクスは多様な細胞が稠密に入り組んだ脳組織という環境に影響を受けます。我々はこれまでにグルタミン酸、イノシトール三リン酸、小胞体内腔Ca2+などに対する新規の蛍光プローブを開発し、ex vivoおよびin vivo脳組織のなかで高解像度イメージングを行うことで、これまで知られていなかったシグナル伝達メカニズムの解明に取り組んできました(代表的論文参照)。

これまでは光学分解能(回折限界)の制約のもとで観察していましたが、近年の超解像顕微鏡技術の発展により、ナノメートルスケールにおける少数のタンパク質分子のダイナミクスこそが脳機能の基盤であることが改めて明らかになってきました。この背景を受けて我々は、脳組織内であっても極めて高いシグナル/バックグラウンド比を実現できる新たな蛍光標識技術と顕微鏡光学系を開発し、「脳組織内1分子イメージング法」の確立に成功しました(論文投稿準備中)。

現在は、この1分子イメージング技術のさらなる高度化と応用に取り組んでいます。たとえば、in vivo1分子イメージング法の開発、凝集性タンパク質の1分子動態を捉えることで神経変性疾患の超早期病態を可視化する試み、さらにはそれに基づく薬効評価・創薬研究へと展開を図っています。

図1.jpgのサムネイル画像