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診療情報

乾癬治療

 近年、乾癬の免疫学的病態はかなりの進歩をみました(図8) 。とくにTh17というTリンパ球のサブセットが、IL-17とIL-22を産生し、乾癬の皮疹を形成していることが明らかになりました。このTh17はIL-23によって維持され、IL-23はTIP-DCと呼ばれる樹状細胞によって産生されます。この樹状細胞の維持にはTNF-αが必要となります。末梢血でのTh17細胞の割合は、乾癬患者では正常人の約3倍認められます。実際、乾癬の皮疹が軽快すると、それにつれてTh17細胞の割が減少します(図9)
 こうした乾癬の病態に関わるサイトカインを生物学的製剤で抑制すると、乾癬は著しく改善します(図10) 。現在、3剤が日本での臨床的に使えるようになり、本学でも積極的にこれらの治療法を行っています。その前後でTh17細胞などをモニタリングするシステムを構築しています。

脱毛症専門外来(紹介予約制)

 浜松医大皮膚科では髪に関するお悩みに対応すべく「脱毛症外来」を開いております。脱毛症状でお悩みの方におかれましては、まずはお近くの皮膚科専門医を受診願います。その上でおかかりの担当皮膚科専門医とご相談の上、ご紹介と病診連携室経由による事前予約をお願いしております。[お問い合わせ:053-435-2111(代表)]。
 脱毛症外来に相談される方の多くが円形脱毛症の方ですが、その他に、男性型脱毛症(男性、女性)、休止期脱毛、抜毛癖、先天性脱毛症、化学療法などによる脱毛、瘢痕性脱毛、膠原病や甲状腺疾患に伴う脱毛症、脂漏性脱毛など多岐にわたります。
 それぞれの脱毛症では原因が異なるため、まずは診断をつけることが重要となります。そのために当科ではまず、どのような脱毛症状であるのかをダーモスコピー、血液検査、皮膚生検、毛髪の顕微鏡的観察などを通して適切に診断するように努め、それにあった治療法の選択を行ってまいります。
 日本皮膚科学会では「円形脱毛症診療ガイドライン」(表1)「男性型脱毛症診療ガイドライン」(表2) を昨年、発表し大きな反響がおきました。脱毛症は医師による診療以外の情報や施術が氾濫していますが、日本皮膚科学会では医学的根拠があるかどうかを国際的論文発表や国内の医学雑誌への発表をもとに調査し、医学的に証拠のある治療法について評価した上でガイドラインを策定しました。しかしこれはあくまで治療の目安であって、この通りに治療すれば脱毛症が解決するというものではありません。大学病院ではこうしたガイドラインに沿った治療以外にも各患者様に適切な治療法は何かを常に考えて診療するよう努力しております。

治療法について

  • 円形脱毛症:
     もっとも有効性が高い治療法は局所免疫療法、ステロイド局所注射があげられますが、これら治療法がいずれの円形脱毛症の方に対して適応する訳ではありません。患者様の年齢、合併症、円形脱毛症の範囲、慢性期なのか急性期なのかなども大きく左右されます。病状を確認するために皮膚生検を検討することもあります。どのような治療法を行っても治療効果の出ない方もおられるのが現実です。ウイッグ(かつら)の相談にものっております。また同じ悩みを持たれる患者様の会についての情報もご用意しております。
  • 男性型脱毛症:
     世の中にはマッサージ施術、シャンプー、サプリメントなどの情報があふれ、いったいどれがいいのかお悩みの方も多いと思います。現在、医学的に根拠を持って薦められる治療法としては、ミノキシジル外用(男性用は5%と1%、女性用は1%のみ)、1mg (0.2mgもあります)フィナステリド内服(更年期前の女性は不可です)、自家植毛となります。マッサージ、シャンプー、サプリメント、医薬部外品に相当する育毛剤についての有効性については、厚生労働省が認定する臨床試験を行っておらず、有効性については不明です。またインターネット上では個人輸入による海外の医薬品も多数見受けられますが、これらを使用した場合における副作用については個人責任となります。また海外の医薬品(ミノキシジル錠)を処方されていることがありますが、循環器系への危険性を伴うものがあり、日本皮膚科学会としては推奨しておりません。一部のインターネットによる海外医薬品個人輸入サイトにおいて、ミノキシジルが日本皮膚科学会推奨であるような記載を見受けることがありますが、ガイドラインでは、あくまで「外用」を推奨しているところであり、内服は推奨しておりません。なお、またミノキシジル外用薬は第1類医薬品でありますので、薬局において薬剤師の指導のもと購入可能な医薬品となります。薬剤師のいないドラッグストアや薬剤師が不在の際には購入できません。なお近年のネット販売規制緩和により、販売方法が多様化しています。
     フィナステリド錠は国内において臨床試験を通して有効性を確認された医薬品となります。自費診療において処方箋の必要な医薬品です。フィナステリドは、妊娠の恐れのある更年期前の女性は内服することはできません。当院の場合、おおよその目安としてフィナステリド処方による治療費の経費は内服薬の経費と診療費、薬局等での経費等をあわせて年間9万円から12万円程度です。医療施設によってこの価格は異なりますので、おかかりの医療機関に事前にお問い合わせください。これにミノキシジル外用薬を毎月1本ご使用になられますと合計で年間おおよそ20万円程度となります。正規の医薬品による治療で最も効果をあげるにはフィナステリド内服とミノキシジル外用となります。
  • 女性の薄毛:
     女性の薄毛は治療の難しい脱毛症の一つです。原因には上記にあげた男性型脱毛症の場合もありますが、休止期脱毛症という薄毛もあります。鉄欠乏症、亜鉛欠乏症や甲状腺疾患、膠原病、出産後などが基礎疾患として隠れていることもありますが、血液検査では全く原因がつかめないこともあります。少々痛いですが、プラッキング試験といって強制的に10本程度の毛髪を引き抜き、その毛根の形態を確認することで休止期毛が増えているのかを確認することがあります。
  • 先天性脱毛症:
     最近、遺伝子解析がすすみ、先天性脱毛症の原因遺伝子が複数みつかりました。近年の報告から、日本人において最も頻度が高い先天性脱毛症は、autosomal recessive hereditary hypotrichosisです。この先天性脱毛症は、頭部全体に柔らかいくせ毛が生まれた時からみられ、あまり伸びません。劣性遺伝ですので、ご両親の髪の毛が正常であっても、原因遺伝子を持っている可能性があります。当院においても1年間に数例診断されています。多くの場合、3~5歳ころになり、どうも髪の毛がのびない、ということをご相談に来られています。診断には、5ml程度の採血で診断できますが、すべての先天性脱毛症の原因遺伝子が判明している訳ではありませんので、結局診断をつけることができない場合もあります。

アトピー性皮膚炎教育入院 

教育入院は、アトピー性皮膚炎についての知識、理解を深め、今後の治療や普段の日常生活に役立てていただく目的で行います。一般的な治療であるステロイド剤の外用やかゆみ止めの内服などの治療と並行して2週間の入院期間中に7つの項目にわたって講義に参加していただきます。また、治療の指標、皮疹改善の評価のために検査のほか、日常使用しているスキンケア用品などのパッチテスト、アレルゲンの検索などを行います。教育入院をご希望の方は、可能な限り現在通院中の医療機関より紹介状を作成してもらってください。入院前には一度、外来受診が必要です。紹介元医療機関を介して外来受診の予約をお取りいただくことも可能です。紹介状のない方、予約のない方は、月、水、金曜日の午前11にまでに初診の受け付けを済ませて、皮膚科外来を受診して下さい。ご不明な点は附属病院皮膚科外来までお問い合わせください(053-435-2111代表)。

 入院費用は健康保険の適用となります(およそ10~12万円です)。

検査

 臨床写真、重症度、VAS、体重測定(毎日)、血液検査(IgE RIST、RASTなど)、尿検査、STAI、DLQI、外用剤、化粧品についてのパッチテスト


講義

  1. アトピー性皮膚炎一般
  2. アトピー性皮膚炎の治療
  3. 外用剤と塗布の仕方
  4. 生活指導
  5. スキンケア
  6. アトピー性皮膚炎の合併症
  7. 食事指導

治療

  1. 内服 : 抗アレルギー剤、抗ヒスタミン剤
  2. 外用 : ステロイド外用剤、その他の外用剤
  3. 食事療法

ナローバンドUVB照射装置

 短波長紫外線(UVB)を使った治療法です。UVBに含まれる光の中で、治療にに最も有効であると考えられている光だけを使います。照射前にオクソラレン軟膏を塗る必要がないことがこの治療法の最大の長所です。また、治療に効果的な光を照射しますので照射量が少なく、治療による副作用という面ではこれまでのPUVA療法に比べると少なく、より安全に治療を行えます。