Nature Publishing Group の医学誌「Molecular Psychiatry」に研究成果が公表されました
2026年03月31日
自閉スペクトラム症中核特徴に対するオキシトシン経鼻剤の改善効果を規定する遺伝子を全ゲノム解析によって同定
本学精神医学講座の研究グループ(責任研究者:山末英典教授)は、国内17施設との共同研究によって、全ゲノムの60万を超える遺伝子多型*1から、自閉スペクトラム症*2中核特徴に対するオキシトシン*3経鼻剤の改善効果を規定する遺伝子を探索し、2型リアノジン受容体という遺伝子の多型を同定しました。この2型リアノジン受容体は、カルシウムチャンネルシグナル伝達を通じてオキシトシン分泌を調節する役割を持つことがこれまでに行なわれていた動物実験から示されていました。全ゲノム60万を超える遺伝子多型から探索して同定した遺伝子についてさらに独立した異なる臨床試験のデータセットでも関連を確認し、さらにはその遺伝子がオキシトシン分泌を調整する分子の遺伝子であったことは、この遺伝子の重要性を頑健に支持する意義深い結果です。今回の研究結果から、投与する前に2型リアノジン受容体の遺伝子多型を確認することでオキシトシンによる治療効果が期待しやすい方に選択的に投与して治療の最適化を行なうという戦略が考えられます。また、リアノジン受容体のようなオキシトシン分泌を調節する系を標的とした新たな治療薬を開発することで効率的で有効な治療方法を開発することが期待されます。
なお本研究は、文部科学省「脳科学研究戦略推進プログラム」の「精神・神経疾患の克服を目指す脳科学研究(課題F):発達障害研究チーム(拠点長:名古屋大学・尾崎紀夫教授)」と国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)脳科学研究戦略推進プログラム『臨床と基礎研究の連携強化による精神・神経疾患の克服(融合脳):発達障害・統合失調症研究チーム(チーム長:浜松医科大学・山末英典教授)』臨床研究・治験推進研究事業(代表:浜松医科大学・山末英典教授)、および日本学術振興会が交付する科学研究費助成事業の基盤研究(B)『自閉症中核症状の新規治療シーズ創出:RCTベースの多層オミクスと検証的動物実験』(代表:浜松医科大学・山末英典教授)の一環として行なわれました。
研究成果は、Nature Publishing Group の医学誌「Molecular Psychiatry」に3月28日付で掲載されました。
*1 遺伝子多型:遺伝子情報を構成する塩基情報に認められる個人差で、この個人差が個人個人の様々な身体的あるいは精神的特徴や様々な疾患への罹りやすさなどと関連していることが知られています。
*2 自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害):従来の自閉症からアスペルガー障害や特定不能の広汎性発達障害までを含む概念です。自閉症的な特性は、知的障害も伴う自閉症から、知的機能の高い自閉症を経由し、自閉スペクトラム症の症状を持ちながらも症状の数が少なく程度も軽い正常範囲の人まで続くスペクトラム(はっきりした境界のない連続体)を形成するという考えに基づいています。中心的特徴として、他者と交流することが難しく社会生活に制約が生じるという社会的コミュニケーションの困難さと、興味が偏り同じ行動を繰り返しやすく変化に対して混乱しやすいという常同行動・限定的興味があります。これらの中核的特徴に対して有効な治療薬が開発されていません。
*3 オキシトシン:脳の下垂体の後葉という場所から分泌されるホルモンで、従来からよく知られる子宮収縮や授乳促進といった女性での身体的作用に加えて、社会行動や信頼行動を促進して人の表情を読み取りやすくするといった男性でも認められる脳における作用が知られてきています。
論文情報
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論文タイトル: |
A key gene modulating oxytocin efficacy in autism: Genome-wide discovery and verification in randomized controlled trials datasets |
| DOI: | https://doi.org/10.1038/s41380-026-03562-y |
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