医学誌「Molecular Psychiatry」に研究成果が公表されました
2025年08月22日
統合失調症におけるα7ニコチン性アセチルコリン受容体の変化がPET脳画像検査で明らかに
ー神経炎症や認知機能障害との関連も確認
本学精神医学講座の和久田智靖講師、横倉正倫助教、山末英典教授らは、本学光医学総合研究所光量子技術開発部門バイオフォトニクスイノベーション寄附講座の間賀田泰寛特任教授、同尖端生体イメージング研究部門生体機能イメージング分野の尾内康臣教授と共同し、浜松PET診断センター設置の浜松ホトニクス社製頭部用陽電子放射断層撮影(Positron Emission Tomography、以下、PET)装置を用いて、α7ニコチン性アセチルコリン受容体(α7 nACh受容体)の密度や活性を反映する指標である結合能が、統合失調症と診断された方で上昇していることを明らかにしました。特に右海馬周辺*1では、神経炎症を反映するグリア細胞の活性化*2、および、統合失調症にみられる認知機能障害の一つである言語流暢性*3課題の成績と関連していました。この結果は、「α7 nACh受容体の変化」を生体脳内で直接的に裏付けるものであり、この受容体を標的とした治療薬の開発に寄与することが期待されます。
本研究成果は、日本時間 2025年8月20日、医学誌『Molecular Psychiatry』に掲載されました。
*1 海馬周辺:記憶や感情に関わる脳の重要な領域で、主に海馬、海馬傍回、扁桃体などが含まれ、互いに密接に連携しています。
*2 グリア細胞の活性化:脳の神経細胞をサポートする「グリア細胞」が、炎症などの影響で形態や働き方を変え、活性化した状態を指します。
*3 言語流暢性:限られた時間内にできるだけ多くの単語を思い出して話す能力のことを指します。記憶力、注意力、言語能力など、さまざまな認知機能が複雑に関与しています。
論文情報
論文タイトル: |
α7 nicotinic acetylcholine receptor, activated glia, and cognitive impairment in schizophrenia: a dual-tracer PET study |
DOI: | 10.1038/s41380-025-03162-2 |