Education
浜松医科大学は1974年6月に開学され、脳神経外科学講座は1978年4月に開設されました。初代植村研一教授が21年勤められ、1999年から2020年まで難波宏樹教授が勤められました。
脳神経外科で主に診療する疾患は脳腫瘍と脳血管障害です。それ以外にも脊椎・脊髄、抹消神経に至るまで神経全体についての診療も行います。大学病院では一般の病院に比べ、脳腫瘍の手術例が圧倒的に多いのが特徴です。脳腫瘍の中で頻度の高いものは髄膜腫、神経膠腫、下垂体腺腫で、それに次いで神経鞘腫があります。神経膠腫以外の腫瘍は脳との境界が明らかであり、手術的に摘出することが治癒につながります。脳機能を温存しながら腫瘍を摘出するために、各種神経モニタリングを用いながら、手術用顕微鏡やニューロナビゲーションシステムを駆使して安全かつ確実な手術を行います。神経膠腫では脳との境界が不明瞭であるため、手術療法のみでは治癒しません。少しでも悪性の所見がある場合には術後の放射線療法とテモダールと呼ばれる新しい抗がん剤を用いた治療を行います。近年、神経膠腫においても手術による摘出度が予後に関係することがわかってきましたので、前述の神経モニタリングやニューロナビゲーションに加え、5ALAと呼ばれる蛍光物質で術中に腫瘍を光らせて摘出率を上げています。さらに言語機能にかかわるような場合には積極的に「覚醒下手術」も行い、言語機能を損なわずに最大限の摘出をする努力をしています。悪性度が低い神経膠腫に対しては、腫瘍細胞の遺伝子発現などの情報をもとにテーラーメイドの治療を行っています。
脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などを総称して脳血管障害と呼びますが、この内の7割以上が脳梗塞です。特に近年増えている頚動脈の狭窄病変に対しては、内膜剥離術またはステント留置術を行います。くも膜下出血の原因である脳動脈瘤に対してはクリッピング術と呼ばれる開頭術またはコイル塞栓術と呼ばれる血管内治療を症例によって選択します。脳血管障害の再発予防などに関しては、リハビリテーション病院や開業医の先生方との地域連携パスの運用につとめ、市民公開講座などを通して脳卒中予防の啓発活動も行っています。また当科の特徴の一つに「機能的脳神経外科」があり、パーキンソン病の運動障害や痛みなど生活の質を落とす疾患に対しても積極的に取り組んでいます。