【研究成果】下垂体癌の分子病態に関わる ゲノム異常を発見 ~染色体不安定性とMEN1遺伝子変異の関与を示唆~
2026年07月17日
下垂体癌の分子病態に関わる
ゲノム異常を発見
~染色体不安定性とMEN1遺伝子変異の関与を示唆~
本学脳神経外科学講座の貴田覚医師(筆頭著者)、小泉慎一郎特任准教授、黒住和彦教授、国立がん研究センター研究所 脳腫瘍連携研究分野の鈴木啓道分野長らの研究グループは、国内多施設から集積した下垂体癌*1の腫瘍組織を対象に、国立がん研究センターの協力のもと、全エクソーム解析*2およびデータ解析を行いました。
下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET)*3の多くは良性の経過をたどりますが、非連続性の頭蓋脊髄転移または遠隔転移をきたした場合には下垂体癌と診断されます。下垂体癌はPitNET全体の約0.12%と極めて稀である一方、予後不良な疾患です。本研究では、4例5検体の下垂体癌組織を解析し、3検体で近半数体化*4を示す全ゲノム規模の低倍数性、3検体でMEN1遺伝子*5変異を認めました。これらの結果から、染色体不安定性*6とMEN1遺伝子変異が下垂体癌の分子病態に関与する可能性が示されました。
本研究成果は、Neuro-Oncology Advances誌に2026年6月2日にオンライン公表されました。
*1 下垂体癌:下垂体由来の神経内分泌癌を指して用いられることのある用語です。下垂体腫瘍では、頭蓋脊髄腔内または全身への転移を伴う腫瘍を下垂体癌またはmetastatic PitNET(転移性PitNET)と表現することがあります。本リリースでは、一般向けに「下垂体癌」としています。
*2 全エクソーム解析(WXS):ゲノムのうち、主にタンパク質をコードする領域(エクソン)を網羅的に解析し、疾患に関わる遺伝子変異を調べる方法です。
*3 下垂体神経内分泌腫瘍(PitNET):従来「下垂体腺腫」と呼ばれていた下垂体由来の腫瘍です。多くは良性に経過しますが、一部は再発・浸潤性増殖を示します。
*4 近半数体化(near-haploidy):通常2セットある染色体の多くが1セットに近い状態となる染色体異常です。がん細胞における大規模な染色体不安定性を示す所見の一つです。
*5 MEN1遺伝子:多発性内分泌腫瘍症1型に関与する遺伝子として知られます。
*6 染色体不安定性:がん細胞で染色体の数や構造が不安定になり、遺伝情報の増減や変化が蓄積しやすくなる状態です。腫瘍の進展や治療抵抗性に関与することがあります。
論文情報
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論文タイトル: |
Possible involvement of genome-wide near-haploidy and MEN1 mutation |
| DOI: | 10.1093/noajnl/vdag146 |
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