「Journal of Human Genetics」に研究成果が公表されました
2025年09月16日
多発形態異常発症の有無に影響する
網膜ジストロフィー原因遺伝子CDK9バリアントを同定
国立成育医療研究センター 仁科幸子眼科診療部長、吉田朋世眼科医員、深見真紀研究所副所長、黒澤健司副病院長、浜松医科大学医学部附属病院眼科 鳥居薫子助教、医化学講座 才津浩智教授、眼科学講座 堀田喜裕教授(研究当時、現:名誉教授)、大阪大学微生物病研究所 石谷閑特任助教、石谷太教授、慶應義塾大学医学部 小崎健次郎教授らは、CHARGE症候群*1に似た多発形態異常を伴う網膜ジストロフィー*2と、多発形態異常を伴わない網膜ジストロフィーの原因遺伝子の同定と、それらの特性の解明に取り組みました。
その結果、いずれも遺伝子発現制御に必須であるリン酸化酵素*3をコードするCDK9遺伝子バリアント*4が原因である可能性を見出しました。また、CDK9のリン酸化酵素活性の低下の程度が多発形態異常発症の有無を決定することも明らかにしました。CDK9のリン酸化酵素活性が、通常のCDK9と比較して、70%程度低下するバリアントの場合は多発形態異常発症を伴い、30%程度の低下に留まるバリアントの場合は多発形態異常発症を伴わないことを明らかにしました。この結果はCDK9遺伝子関連疾患の理解を深めるうえで重要な研究成果となります。
本研究成果は、J Hum Genet. 2021(第1報)の発展的続報であり、J Hum Genet. 2025に掲載されました。
*1 CHARGE症候群とは、遺伝子変異により、眼異常、心疾患、後鼻孔閉鎖、成長障害、外陰部低形成、難聴など多系統の先天異常を伴う疾患です。
*2 網膜ジストロフィーとは、遺伝子の変異によって網膜の機能が徐々に低下する進行性の病気です。
*3 リン酸化酵素とは、リン酸供与体からリン酸基を別の分子(基質)に転移させる酵素の総称です。
*4 バリアントとは、遺伝子にみられる変化のことです。ヒトが生まれつき有している遺伝子には個人個人でばらつきがあり、病気を引き起こすことのない遺伝子変化が多数存在します。病気を起こすかどうかは別として、遺伝子の変化をすべてバリアントと呼んでいます。
論文情報
論文タイトル: |
Novel biallelic CDK9 variants are associated with retinal dystrophy |
DOI: | 10.1038/s10038-025-01395-1 |
大学の関連ページ