英国学術雑誌「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に研究成果が公表されました
2025年10月30日
胸腔鏡下手術が切除可能食道がんの新たな標準治療に
~開胸手術に劣らない生存期間が示され
低侵襲手術の有効性を世界で初めて報告~
国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院(所在地:東京都中央区、病院長:瀬戸 泰之)が
中央支援機構( データセンター/ 運営事務局) を担い支援する日本臨床腫瘍研究グループ( Japan
Clinical Oncology Group:JCOGジェイコグ)では、科学的証拠に基づいて患者さんに第一選択として
推奨すべき最善の治療である標準治療や診断方法等を確立するため、専門別研究グループで全国規模の
多施設共同臨床試験を実施しています。本学医学部附属病院長 竹内 裕也(外科学第二講座教授)は
本研究においてJCOG食道がんグループ代表を務めております。
この度、JCOG 食道がんグループでは、切除可能な食道がん(食道扁平上皮がん)に対する手術法と
して、従来の開胸手術と、より低侵襲で患者さんに負担が少ないと考えられる胸腔鏡下手術の生存期間
を比較するため、国内多施設によるランダム化比較第III相試験*1を実施しました。
本試験の結果、胸腔鏡下手術を受けた患者さんの生存期間は、開胸手術を受けた患者さんに比べて
劣らないことが示されました。また、食道がんの術後早期に呼吸機能低下を来す患者さんの割合が、胸
腔鏡下手術を受けた患者さんで低いことが示されました。これらの結果から、胸腔鏡下手術は切除可能
な食道がん患者さんに対する標準治療の一つになることが示されました。
食道がんの手術は頸部・胸部・腹部と広範囲に及ぶため患者さんの心身への負担が大きく、より低侵
襲な手術が求められています。本研究成果により、食道がんに対する低侵襲外科治療の選択肢が広がる
とともに、患者さんの術後の回復が早まり、QOL(生活の質)の向上にも繋がると考えられます。
本試験の結果は、胸腔鏡下手術の長期成績に関する世界初の知見として国際的にも高く評価され、世
界的に権威のある英国学術雑誌「The Lancet Gastroenterology and Hepatology」に2025 年10 月14 日
(英国時間10 月13 日)付で掲載されました。
JCOG では、がん患者さんにとっての最善の医療を確立するための臨床試験を今後も行ってまいりま
す。
*1 ランダム化比較第III相試験:登録された患者さんをランダムに各治療群に割り付け治療成績を比較する、
検証的な臨床試験のことです。
論文情報
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論文タイトル: |
Thoracoscopic versus open oesophagectomy for patients with oesophageal cancer (JCOG1409 MONET): a multicentre, open-label, randomised, controlled, phase 3, non-inferiority trial |
| DOI: | 10.1016/S2468-1253(25)00207-9 |
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