日本呼吸器学会雑誌「Respiratory Investigation」に研究成果が公表されました
2025年02月20日
KL-6とSP-Dが免疫関連肺臓炎の診断に有用
本学医学部附属病院腫瘍センター 柄山正人講師、内科学第二講座 中井省吾医師(大学院生)、須田隆文教授(当時、現:理事・副学長)、放射線診断学講座 五島聡教授らの研究グループは、免疫チェックポイント阻害剤(ICI)による治療を受けたがん患者の電子カルテ情報をレトロスペクティブに解析し、免疫関連肺臓炎(immune-related pneumonitis: irP)の診断におけるKL-6とSP-Dの有用性を報告しました。
irPは免疫チェックポイント阻害剤の治療において約10%の頻度で発症し、時に重篤な経過をたどる重大な副作用です。免疫チェックポイント阻害剤治療の急速な発展に伴い、がん治療におけるirPのマネージメントの重要性は高まっています。irPに対しては高用量のステロイド治療を必要としますが、発症早期には咳や呼吸困難といった呼吸器症状を伴わないことも多く、また胸部レントゲンでの陰影の指摘が困難なことも少なくないため、特に非呼吸器専門医が発見することがしばしば困難です。また、がん患者では細菌性肺炎や癌性リンパ管症といった肺疾患を合併することも多く、これらの肺疾患とirPの鑑別はしばしば困難です。KL-6とSP-Dは間質性肺疾患の血液マーカーとして広く用いられる簡便な指標ですが、irPの診断における有用性はこれまで報告されていませんでした。
同研究グループは、2014年9月から2023年10月に当院でICIによる治療を受けた631名のがん患者の電子カルテ情報をレトロスペクティブに解析し、irPの診断においてKL-6とSP-Dが有用であることを報告しました。
本研究の成果から、免疫チェックポイント阻害剤投与中の患者においてKL-6とSP-Dを測定することで、irPのスクリーニングや確定診断に寄与することが期待されます。
本研究結果は、日本呼吸器学会雑誌「Respiratory Investigation」に2025年2月18日に公表されました。
論文情報
論文タイトル: |
Utility of serum Krebs von den Lungen-6 and surfactant protein-D levels for the diagnosis of immune checkpoint inhibitor-induced immune-related pneumonitis |
DOI: | 10.1016/j.resinv.2025.02.005 |
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