米国科学振興協会の科学雑誌に研究成果が公表されました
2019年10月16日
本研究は、本学の神経生理学講座渡部美穂助教、福田敦夫教授、イェール大学医学部のKristopher T. Kahle博士らのグループと共同で行ったものです。
脳内の主要な抑制性伝達物質であるGABA(γ-アミノ酪酸)は発達期には興奮性伝達物質として働いており、発達に伴いKCC2(カリウム-クロライド共役担体)の機能が高まることにより、GABAの作用は興奮性から抑制性に変化しますが、そのメカニズムは明らかになっていませんでした。
今回、この変化にはKCC2のリン酸化による機能制御が関わっており、幼若期にはKCC2の906番目と1007番目のスレオニン残基がリン酸化されているため機能が抑制されており、発達に伴い脱リン酸化されることでKCC2が機能し始め、GABAによる抑制性伝達が形成されることを明らかにしました。
今回の発見により、KCC2のリン酸化部位をターゲットとした、てんかんや自閉症、統合失調症など様々な精神疾患への新薬の開発が期待できます。
この研究成果は、10月16日(日本時間)に米国科学振興協会の科学雑誌「Science Signaling」に掲載され、その表紙を飾りました。また、Editorial Board(同誌編集委員)により注目論文に選定され、「FOCUS」に論文の紹介およびコメントが掲載されました。
発達に伴うKCC2の脱リン酸化がGABAによる抑制力と生存のカギとなる
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