国立大学法人 浜松医科大学

教育

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研究内容

核医学

 核医学検査では、放射性薬剤が臓器や病巣に集積することを利用していますので、CT検査やMRI検査などの形態画像とは異なる生理学的、生化学的情報が画像化されます。形態的異常をきたす原因となる代謝の変化や受容体、トランスポータの発現を捉えることができるのです。形態的には変化がない臓器の異常を検出することもできます。核医学検査にはこのような優れた特徴があり、CT検査やMRI検査と補完的に用いることにより、より的確な診断に結びつきます。

 一方、核医学治療は放射性薬剤の性質を利用して病巣に放射線を照射します。外照射や密封小線源治療では照射野外の病巣に対しては効果がありません。抗癌剤は全身に分布しますので隠れた病巣にも効果がありますが、正常組織にも大きな影響を与えます。核医学治療では放射性薬剤が病巣に特異的に集積しますので、全身の病巣に対して病変部のみに放射線照射することができる理論的にきわめて優れた治療法です。

 核医学においては新しい放射性薬剤の開発がまったく新しい画像診断法、治療法につながりますので、研究対象としても夢の多い分野です。

近赤外光を用いる新しい乳がん診断法の開発

 可視光あるいは赤外光の波長領域においては、生体組織中のヘモグロビンと水による光吸収が大きいが、700nm~1,000nmの近赤外光領域では両者の吸収が比較的弱くなっているため、生体組織に対して光学的な窓となっています。すなわちこの波長域の光はほかの波長域の光と比べて、比較的良く生体を浸透します。

 当講座では浜松ホトニクス株式会社と協力して、この近赤外光を利用し乳がんの光吸収特性の測定を行っています。得られた光学パラメータからヘモグロビン濃度や酸素飽和度が計算されます。また局所の光学パラメータの測定にとどまらず、これを断層画像として表示することを目指しています。これまでの研究で乳がんは正常乳腺と比較し高いヘモグロビン濃度を示し、抗がん剤投与後すみやかに低下することが分かってきました。抗がん剤治療時の早期効果判定に役立つ可能性があります。

血流解析

最近注目されているMRIの拡散強調画像(diffusion weightedimage:DWI)は、水分子の動きそのものを追跡している。MPG( motion probing gradient:双極傾斜磁場)をかけることで、水が活発に運動すると信号が低下する仕組みを用いたものである。

速度解析

 MPGをより厳密に用いれば、速度解析も可能である。これには位相コントラスト(phase contrast:PC)法を用いる。3D PC法ではXYZ軸方向にMPGをかけ、位相のずれを信号の差として計測する。MagnitudeとXYZ軸方向のベクトルデータを繰り返し収集することで、全体のボクセルの速度、例えば血管内の水分子の速度を得ることができる。また、造影MRアンギオグラフィーを用いて、血管の「型を取る」ことを行う。これには、2D cine PC法で大体の流速をつかんでvelocity encoding(VENC)を決定してから、4D-Flow(3D cine PC法)で撮影し、流線解析という後処理を行うことにより、心電図の心周期に沿って描出された血管画像を得ることができる。

速度解析

 画像を拡大すると、個々のベクトルの動きが観察でき、例えば大動脈解離における血液の流れを心周期に沿って追跡でき、解離腔から腹腔動脈や腎動脈等分枝動脈が分岐しているといったこともわかる。

速度解析


剪断応力解析

 剪断応力とは血流が血管に及ぼす摩擦力とみなすことができるが、この剪断応力の高低は動脈硬化性病変の形成に重要な役割を果たしていると考えられる。動脈硬化は血流の緩やかな場所、すなわち剪断応力の低い場所に生じる。血管が健康であるためには、層流という比較的速い流れが必要であり(速すぎる流れも血管内皮を傷つけるため、問題である)、それが種々の作用を介して健康な動脈形成に役立っている。しかし、渦流や乱流が存在し、血流が停滞すると、t-PAやトロンボモジュリンの低下、VCAM-1上昇などのプロセスを経て動脈硬化性病変が起こりやすくなる。

速度解析

 大動脈に疾患を持つ患者で剪断応力のマップを作成したところ、大動脈瘤の壁において、いずれの心時相でも極めて低下していることが確認された。

 ちなみに、基礎研究では、剪断応力が1.5Paを下回る場所に動脈硬化が生じやすいと言われている。この患者でも1.5Paの剪断応力を示す部分はごくわずかしかなく、大動脈瘤が形成しかかっているように見えるが、この剪断応力の低さによるものと推測される。動脈瘤部位の剪断応力が低い理由は、流線解析を行うとよく理解できる。拡張していない部分では層流が認められるのに対し、瘤の部分は乱流と渦流になっており、剪断応力が低いことが推測できるのである。

 剪断応力が低いと動脈硬化が生じ、動脈硬化が生じると動脈壁が脆弱化する。結果、動脈が拡張する。拡張によって血流速度が低下し、乱流や渦流が生じ、剪断応力がまた低下するという悪循環に陥って、破裂に至ると考えられる。

vicious cycle

 動脈瘤以外の部分でも、渦流を生じて剪断応力が低下している場所では、将来的に動脈瘤の形成や動脈硬化性の狭窄が生じることが推測できる。