教育

Education

教授メッセージ

教育に関する抱負

学部教育について

松山 幸弘

浜松医科大学が大学院大学として機能し、個々の医学専門領域で世界的にも指導的立場の人材を多く輩出するために、学生教育が従前にもまして重きをなします。私は今後の学部教育では、臨床研究、そして基礎研究双方に力を注ぐことは当然ながら、より優れた臨床研究者の育成を念頭に置いた医学教育を行う必要性があると思います。臨床講義や実習の更なる充実に加えて、学生に基礎医学研究の重要性と臨床医学との結びつきを教育する必要があります。これにより臨床面では医学は科学であるという基本認識に立ち、問題点の解決法を科学的に探るという基本姿勢の修得が期待できます。また、臨床研究を行う上での基礎医学研究の重要性を理解する一助にもなります。本学部には多くの俊英が集まってきます。彼らの才能を十分に伸ばすことが教員に課せられた重要な責務であることを考えると、医師国家試験に合格するための知識を教育するだけでは、大学院大学の教育責務を果たしているとはいえないと思います。

卒後教育について

現在、初期研修が盛んに議論されていますが、医師は一生涯、教育を受け、自己研修に励むべきだと思います。
まず浜松医科大学整形外科の魅力をまし、若手医師がここで学びたいと思えるような環境を作る必要があります。私は脊椎脊髄外科医でありますが、脊椎脊髄外科をここで学べばどこに出ても誇れる知識と技術を身につけられるようにしたいと思います。臨床で誇れるには、土台のしっかりした基礎研究の上になりたった臨床研究が必要で、研究発表、論文を作成することによって知識の整理と向上をはかり、その結果、患者様によりよい医療を提供できるようになると考えています。

これまでの脊椎脊髄外科医師としての実績

私は臨床医学として脊椎脊髄外科、そして基礎医学として脊髄損傷後の脊髄再生をテーマとして研究してきました。脊椎脊髄外科の中でも、特に難治性である脊髄髄内腫瘍と後縦靭帯骨化症で麻痺率の高い胸椎後縦靭帯骨化症の治療を中心に行ってきました。どちらの疾患も手術的加療に難渋し、術後神経症状が悪化する可能性が高いため多くの脊椎脊髄外科医も敬遠する疾患です。脊髄髄内腫瘍は一年に20例近く行い、今まで私自身が手がけた髄内腫瘍は149例であります。髄内腫瘍の手術的加療を行う上で、最大限に注意を払わなければならないのは術後の麻痺をできる限り少なく、そして可能な限り全摘出をめざさねばならないことです。この目的を達成するため、手術手技の向上と術中脊髄モニタリングの確立につとめ、その結果として術後麻痺の悪化率は20%へ軽減し、全摘出率は80%を超える成績まで得ることが可能となりました。

脊髄麻痺を回避するのに必要なのは適切な脊髄モニタリングの確立です。我々が開発した術中脊髄モニタリングの特徴は、頭部を電気刺激し、16の筋肉の筋電図を術中にモニターすることで、運動路のモニタリングを行うことにあります。術中にモニターが悪化した場合には、脊髄腫瘍摘出操作を休憩し、モニタリングが改善したところで再度手術操作を開始します。この操作を繰り返すことによって脊髄麻痺を軽減しながら、腫瘍摘出を可能とします。この脊髄モニタリングは髄内腫瘍摘出に応用するだけでなく、全ての脊椎脊髄手術をより安全に行うために有効な手段となりえます。現在は脊椎脊髄外科学会で脊髄モニタリング委員会プロジェクト委員長を拝命し、脊椎脊髄手術をより安全に行うためにこの脊髄モニタリングの知識と技術普及に努めています。

これからの抱負~安全安心の医療と若手教育~

臨床においてはやはり私の専門分野である脊椎脊髄腫瘍、後縦靭帯骨化症、高度脊柱変形など、大学ならではの難治症例にチャレンジするとともに、さらに手術を安全に行うための脊髄モニタリングのさらなる開発、そして一番重要な若手脊椎脊髄外科医の育成を重点的に行いたいと思います。当然運動器として重要な関節外科もなおざりにせず、地域病院と連携し最先端医療を、そして若手関節外科医を育成したいと考えています。

基礎医学との連携

運動器領域の疾患を対象とする整形外科医が、臨床医でありながら先進の臨床研究を行うためには、助言者として他領域の共同研究者を持つ必要があると考え、私は学内外の基礎系、臨床系研究者との臨床・研究面で協力体制の構築に努めてまいりましたし重要と考えています。臨床上の問題点を基礎医学研究者との連携で解決することが、新たな診断法・治療法開発に繋がります。同一施設内に基礎医学教室を持つという大学の利点を生かして、他領域研究室との共同研究による整形外科疾患の治療法開発を今後も活発に進めたいと考えています。

最後に、私は浜松医科大学医学部付属病院整形外科が最も安全で先進的な整形外科治療が受けられる医療機関であると広く認知され、患者様にとって安心で、また医師にとっては魅力的な存在にしたいと考えています。