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ヒトに病原性を持つウイルスが「どのように感染増殖するのか」「どのようにして病気を起こすのか」を明らかにする研究を行っています。その研究成果はウイルス感染症の新たな予防・治療法の開発に繋がります(繋がると信じます)。
ウイルスは細胞ではありません。細胞へ侵入して細胞が持つ多くの機能を利用することで初めて子孫ウイルスを作ることができます。従ってウイルスのライフサイクルや感染に伴う病態発現機構を理解するには、ウイルスが持っているあるいは作り出す遺伝子やタンパク質が細胞分子とどのように連携しているか、細胞機能に介入するのかを明らかにすることが重要です。
一方、生物学の歴史の中では、ウイルス研究から生まれた発見がウイルス学だけでなく生命科学全体の発展に大きく貢献したケースがいくつもあります:逆転写、RNAスプラシング、翻訳開始機構、癌遺伝子、細胞融合 などなど。我々も「あわよくば」と思い、ウイルスをツールとしてウイルス感染以外の生命現象の仕組みも明らかにできないかと考えています。
新型コロナウイルスの話題の中で、「正しく恐れる」という言葉を耳にします。ウイルス感染を軽んじることは問題ですが、ウイルスに対する不安から、感染者や医療従事者などに対して差別的な対応をとってしまうなどの事例も発生しています。感染症のリスクに適切に備えるため、ウイルスはどのように増えるのかといった感染症の原因ウイルスの特性を理解することはとても重要です。