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これまで一貫して細胞内シグナル伝達に関する研究に携わってきました。現在は,ラパマイシン(シロリムス)の標的であるTORC1キナーゼ複合体の活性制御機構を主要な研究テーマとしています。
TORC1は細胞成長と代謝を制御しているシグナル伝達因子です。栄養や増殖因子などを感知して活性化されたTORC1は,さまざまな基質のリン酸化を介して同化を促進します。さらに,発生・分化・神経機能・癌・免疫・生活習慣病・老化などへの決定的な関与が示されて,幅広い関心を集めるようになりました。
私たちはTORC1の活性制御機構について研究しています。特に栄養が細胞内でどのように検知されTORC1を活性化しているかに興味をもって研究を進めています。これまでの業績については,Google Scholarを参照してください。
脊椎動物視細胞における細胞内光情報伝達系の研究を行っています。
視細胞の光情報伝達系は、細胞内情報伝達研究としては、最も進んだ分野の一つであり、視細胞で光を受容するタンパク質やそれを細胞の興奮まで結びつけるタンパク質はすでに明らかになっています。しかし、それらのタンパク質の機能を支える仕組みや、調節の仕組みなどはまだまだ明らかになっていないことがたくさんあります。
細胞にある様々な膜構造をつくっている脂質二重層には、脂質ラフトと呼ばれる流動性の低い領域があることが分かっています。これまでに、視細胞にも脂質ラフトが存在し、情報伝達タンパク質が、活性化に伴って脂質ラフトに移行することを明らかにすることができました。現在、この視細胞の脂質ラフトが、情報伝達にどの様に関与しているのかを明らかにしたいと考え、研究を進めています。
生物の形は多種多様とは言うけれど、目に見える形だけがすべてではなく、電子顕微鏡を使ってやっと見える構造もある。これまでずっと卵ばかり研究してきたが、昆虫の複眼など出来上がった形態の美しさ、精巧な構造の中に潜むナノスケールレベルの構造の物凄さに驚かされている。一体こんなところにこんなものをどうやって作ったの???電子顕微鏡を見ながらブツブツ独り言をいう今日この頃である。
医学科1年生の生物学実習を担当しています。実習の最初に行うウシガエルの解剖では、解剖実験が初めてだという人も多く、学生も教員も毎年苦戦しています。
研究では「環世界」をキーワードに、フナムシとゲンジボタルを用いて実験を行っています。フナムシは甲殻類等脚目の生き物です。等脚目の仲間は、海・陸・淡水・高山など非常に多様な環境に生息していて、その形態や大きさも様々です。ある種の動物が非常に広い環境に生息できるのはなぜか、あるいは限られた範囲の場所にしか生息できないのはなぜかという疑問を、フナムシを用いた生理学的なアプローチによって解明することを目指しています。また、夜行性昆虫であるゲンジボタルは、日没から深夜にかけて活動し、緑色の光の点滅によってオスとメスが交信します。ホタルが示すこれらの行動を、視覚を解析することによって明らかにすることを目指しています。
医学科1年の実習を担当しています。カエルの解剖の指導歴が長くなり、人間の体のことは詳しくわかりませんが、カエルの体ならば内臓はもちろんのこと、骨や筋肉,血管に至るまで大変詳しくなりました。 研究面では、主に視物質発色団の高速液体クロマトグラフィー分析を担当しています。目の中には視細胞があり、光はまずこの視細胞に存在する視物質で捉えられます。視物質はタンパク質部分であるオプシンと発色団であるレチナール類で構成されています。今は甲殻類端脚目のヨコエビ類の視覚について興味を持って研究しています。ヨコエビ類は超深海から高山まで、海水域、淡水域、陸上にも生息している種がおり、それらの発色団を網羅的に解析することにより、視覚機能がどのようにその様々な光環境に適応していったのかを解明したいと考えています。