米国医学会誌「Psychiatry Research Communications」に研究成果が公表されました
2024年09月04日
メラトニン分泌の変化は注意欠如多動症(ADHD)症状と関連する
~ADHDをもつお子さんの睡眠覚醒リズムの異常の一端を解明~
本学子どものこころの発達研究センター 高橋長秀 客員准教授(名古屋大学医学部附属病院親と子どもの心療科 准教授)、土屋賢治 特任教授(大阪大学大学院連合小児発達学研究科 特任教授(常勤))のチームは、「浜松母と子の出生コホート研究(HBC Study)」の一環として、台湾国立大学との共同研究を行い、夜にメラトニンの分泌が低下しやすい体質(遺伝子の変化)を持つと、注意欠如多動症(ADHD)の症状が強くなることを見出しました。
メラトニンは光を浴びると分泌が抑制されるために、これまでに夜間のメラトニンの分泌を正確に測定するには特殊な条件で行う必要がありました。尿中のメラトニン代謝物は分解されにくく安定しているため、その測定を行うことで夜間のメラトニン分泌量を正確に推測できることを利用して、近年、台湾国立大学の研究者らは、メラトニンの分泌に関与する遺伝子の変化を明らかにしました。本研究では、まず、メラトニン分泌に関する遺伝子解析を利用して、メラトニン分泌とADHDの診断には、遺伝的な関連性が強いことも明らかにしました。
次に、夜にメラトニンの分泌が低下しやすい体質(遺伝子の変化)を持つと、ADHDの症状が強くなることを見出しました。
本研究の結果は、ADHDを有するお子さんでは睡眠覚醒リズムが乱れやすく、早朝に光を浴びる、夜間のスクリーンタイムを減らすなどの睡眠衛生を改善すること、並びに適切にメラトニン製剤を利用することなどの工夫が、ADHD症状に対して良い影響を持つ可能性があることを示唆していると考えられます。
本研究成果は、国際的に権威の高い英文誌である米国医学会誌「Psychiatry Research」の姉妹紙である「Psychiatry Research Communications」に8月7日に公表されました。
論文情報
論文タイトル: |
Association between genetic risk of melatonin secretion and attention deficit hyperactivity disorder |
DOI: | 10.1016/j.psycom.2024.100188 |
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