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PBLチュートリアル教育

PBLチュートリアルの基本理念は「学生自身による自己学修・自己評価」です。この教育方法を導入することにより、学生の問題発見能力と問題解決能力を伸 ばし、生涯学修の態度を身につけてもらいます。チューター(主に教員が担当)の役割は、学生が自らの目標を達成するための助言者です。

PBLチュートリアル教育とは

言葉の意味

PBLという言葉は、Problem-based learningの略で、課題(症例)に基づく学修アプローチという意味です。すなわち課題に立脚しながら学修を進める方法を言います。PBLチュートリアルは少人数の学生がチューターの助言を得ながら個々の問題解決に必要な事柄を学ぶ方式で、PBLに基づく学修を「PBLチュートリアル」と呼称することもあります。それに携わる教員を「チューター」と言います。

概要と特徴

PBLチュートリアルでは5~8名程度の学生からなる小グループにチューターと呼ばれる担当教員1名を加えて行われますが、従来のセミナーのように少人数の学生に対して教員が講義をする授業ではありません。本学では1グループを6~8名の学生で構成してPBLチュートリアルを進めます。学生のグループ構成はユニット(後述)毎に変更します。チューターがつくPBLチュートリアル時間は、ユニットによって異なりますが週2回を基本とし、1週で1課題が終るように組み立てています(ユニットによっては、週をまたがって1課題を取り扱う事もあります)。原則朝8時30分からの1時間をPBLチュートリアル時間に指定しています。引き続く1時間をチューターの付かないグループ学修の時間、その後は自己学修の時間に当てています。
 例えば、週2回行われるPBLチュートリアル時間の具体的進行は、

  1. 1回目のPBLチュートリアルの時間には、まず最初に、学修を進めるための課題(症例)が提示されます。課題(症例)には、医学部の学生である君たちが将来遭遇するであろう事例を多く用います。臨床的な事例が多いですが、ユニットによっては必ずしも臨床症例とは限りません。臨床的な事例で学修する目的は、診断訓練を行うというのではなく、将来実際に医療現場で体験するであろう事例に直面することによって、その背景の理解や問題解決のために何を身につけておく必要があるかを自ら考え、「問題解決能力を伸ばし生涯学修の態度を身につける」という学修目的を明確にするためです。さらに、学修に強い動機を与える意味もあります。より深くより楽しく学修出来る事例を用意しています。
  2. 学生はその課題事例の中から、鍵となる事実(Facts)を列挙し、それらから推測される様々な問題点(基礎科学、基礎医学、臨床医学、社会医学的な問題や疑問点、論点など)をグループ討論により抽出します。ここでは自由に問題点を出してください(これを思考の発散といいます)。そして、その問題点の背景や成因について仮説(Hypotheses / Mechanisms)を立て、その仮説を検証するためには何が必要か(Needs to know)、何をどのように自己学修すればよいのか(学修項目、Learning Issues, LIs)を話し合います。ここで言う仮説は、特別立派な仮説を立てるという意味ではなく、学生達の考えた範囲での仮説で十分です。ここでは今までの医学教育に乏しかった「与えられた情報(Facts)を基に様々な仮説を立てる・メカニズムを考える」という訓練を行います。その後学修項目に、重要と思われる順に番号をつけて1回目のPBLチュートリアルは終了します。この1回目をステップ 1と言います。
  3. 次にその学修項目LIsに基づき、各自が図書館の参考書、文献、指定された教科書、Medline,インターネット等を駆使して自己学修を行います。また課題に関連した講義・実習が行われる場合もあります。さらに自分たちで解決出来ない問題点は、そのユニットの、あるいはその課題の学修指導教員(リソース・パーソン)に相談することも可能です。学生のグループ学修、自己学修の時間も正規の時間割の中に確保してあります。自己学修をステップ2と言います。
  4. 2回目のPBLチュートリアルの時間には、各自が学修してきた事柄をグループ員に発表・説明し、他のメンバーが学修してきた内容と突き合わせてディスカッションします。この討論の過程で、先に立てた仮説を科学的根拠に基づいて検証します。3回目のPBLがある場合は、さらにシートが追加配布され、新たな問題の提起を行い、次回(3回目)までの学修項目LIsを決めます。この間チューターは通常の授業のように学生に答えを教える事はしません。ディスカッションを盛り上げ、学生が立てる学修方針が課題から大きく逸脱しないように導き、自己学修の方法をアドバイスします。解答を与えることは禁止されています。しかし解答以外の、内容を深めるための様々な質問があらかじめ用意されています。
  5. 各課題の最後に行われるPBLチュートリアル(2回目ないし3回目、)では、前回と同様に学修項目LIsについて発表しディスカッションを行った後、司会者は課題をまとめます。PBLチュートリアル終了後チューター評価と課題評価を行ってその週のPBLチュートリアルは終了です。この発表と「まとめ」をステップ3と言います。
  6. 本学では、その課題の終わりに(原則として、2年生は水曜日、3年生は木曜日、4年生は金曜日のそれぞれ午後、ユニットによっては他の時間に行う場合もあります)、グループ学修の成果を発表してもらう総合討論の時間を設けています。そこでは指定されたグループの代表が、全員に対して課題から抽出できた仮説と学修項目、そして学修成果を発表します。また、事例作成担当者、ユニットないしコース責任者は学生の発表についてコメントし、さらにまとめとして総合講義を行います。

目標

PBLチュートリアルは、上記のような過程を通して1)学生主体の能動的自己学修と2)少人数によるグループダイナミックスを活用した学修形態により、3)問題に準拠した学修、4)統合的・学際的な学修を押し進めることによって次のような効果を上げることを目標としています。

  1. 自己学修の方法と習慣を身につける。
  2. 問題の把握とその問題点の性格を明らかに出来る能力を身につける。
  3. 科学的根拠に基づいた論理的思考と科学的検証により、問題を解決する方法を身につける。
  4. 課題(症例)を通して医学的問題に関わる基礎科学、基礎医学、臨床医学及び社会医学的知識を身につける。
  5. 将来、医療チームの一員として、集団の中での協調性と積極性ならびに責任を発揮できる態度と技量を身につける。
  6. 自己ならびに他の学生、事例、チューターを適正に評価し、適切なフィードバックに基づいて改善したり資質向上を促す態度と技量を身につける。

この方式による学修は、単に課題が与えられそれを学修する、あるいは「正しい解答」を見つけ出す事ではありません。PBLチュートリアルでは「何を学ぶべきか」を探り出し、さらにそれを「探しに出かける」ことの重要性を大切にしています。したがって先輩に安易に「課題(症例)の解答」を聞くことは望ましくありません。それは自分から、自己学修する機会を奪ってしまうことになるからです。今回学んだ課題をこれから学ぶ学生に提示することも同じ理由で厳禁します。

チュートリアル教室配置図

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