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研修案内

研修の特徴および期間と経済的サポート

本講座における研修の特徴

わが国において、少子化にも関わらず子どものこころの問題は増え続けています。しかし専門的に対応出来る児童精神科医はまだ少なく、需要に応じることができない状況です。


本講座の、研修内容の特徴としては次の3つがあげられます。

  1. 後期研修医、精神科の基礎研修を既に受けた医師、および小児科の基礎研修を既に受けた医師のそれぞれに対応できる研修プログラムを備えている。精神科が未経験の医師は、精神科の基礎研修も可能である。必要に応じて、精神保健指定医、精神科専門医、児童青年期精神医学領域の認定医の取得も可能である。
  2. 発達障害をはじめ、児童青年期精神医学の諸対象への外来治療、さらに児童青年期精神科の専門病棟での入院治療の研修が可能である。さらに、リエゾン、福祉、司法など幅広い関連領域の研修が出来る。児童、青年の心理検査、認知行動療法、精神療法、トラウマ治療などの研修が出来る。
  3. 臨床研究の指導体制が整っている。さらに世界レベルの研究に参画することも可能なシステムを備えている。

研修期間と経済的サポート

2年間と3年間の研修コースが用意されています。3年間の研修をお勧めしますが、個々の事情や希望に合わせて必要なカリキュラムを選択することが可能です。 また諸機関の協力のもと、研修をしながら経済的にサポートが可能なシステムが作られています。

習得目標:基礎とオプション

基礎

  • 発達障害の診断と、外来、入院での治療ができる。
  • 児童青年期の情緒障害に対する診断と、外来、入院での治療ができる。
  • 家族への治療、指導ができる。
  • 認知行動療法をはじめとする、児童青年期の精神療法ができる。
  • 児童青年期のケアに不可欠な、教育、福祉、司法の諸機関との協働ができる。

オプション

  • 児童青年期のリエゾン精神科治療、コンサルテーション
  • トラウマ処理技法の習得
  • 児童青年期精神医学における、臨床、疫学、薬物、生物学的研究

研修の概要

この図はあくまで概要です。個々の医師の希望やニードに応じて、フレキシブルな研修が可能です。

研修の概要図

  • 独立行政法人国立病院機構天竜病院では2011年に児童精神科病棟の改築が行われ、全50床うち閉鎖病棟29床と、重症の行動障害を持つ症例にも対応が可能となりました。天竜病院を中核に、様々な臨床研修が組み立てられています。
  • サテライトクリニックは児童青年期の発達障害の患者を主とした外来です。ここで指導医と外来を経験し、発達障害の診断と治療の研修を行います。
  • 関連機関とは、児童相談所、児童自立支援施設、少年鑑別所、教育相談機関などです。
  • 総合病院精神科に出向き、リエゾン・コンサルテーションの研修を行うことができます。
  • 指定医などの資格を必要とする方は単科精神病院での研修を行います。その間、天竜病院における臨床は一部のみ継続します。

共通カリキュラムの説明

  • 入門講座:精神医学を巡る基礎的な講義を受けます。この講座は、浜松医科大学付属病院精神科神経科入局者と合同で行われます。
  • ケース検討:定期的なケース検討会を実施します。2年目以後は、グループによる検討以外に、指導医との1対1の個別検討会を持ちます。
  • 児童青年期精神医学講座:児童青年期精神医学について連続講座の講義を受けます。
  • 臨床精神療法・心理検査:精神療法と心理検査の理論と実践を学びます。遊戯療法や箱庭療法などの、力動精神療法のみならず、認知行動療法、応用行動分析、トラウマ処理技法などの技法を学ぶことができます。
  • 臨床研究指導:原著論文として認められるレベルの臨床研究をまとめます。
  • 共同研究参加:浜松医科大学精神科神経科、子どものこころの発達センター、連合大学院において実施されている研究に参加します。

参考資料

児童青年期精神医学における具体的な研修内容を参考資料として示します。

基礎的内容

  1. 幼児、児童、青年期における心身の発達
  2. 親子関係、家族とそれに関連する諸問題、わが国の状況
  3. 子ども及び親に起きるこころの障害
  4. 診断基準(ICD, DSM, Zero to Three)
  5. よく使われる心理検査、チェックリスト
  6. 精神療法の基礎
  7. 薬物療法の基礎

医療上の技能

  1. 診断法
    1. 医学的評価
      1. 精神医学的診察Mental Status Examination
      2. 発達の評価
      3. 行動の評価(家、家庭)
      4. 親子関係の評価
      5. 家族の評価
      6. 地域支援システムの評価
    2. 所見の組み立て(Formulation)
    3. 初期診断と鑑別診断

  2. 治療法の詳細
    1. 診断に基づく治療方針の見立て
    2. 精神療法
      個人精神療法(遊戯療法、認知療法、行動療法、力動的精神療法、その他)
      親へのガイダンスと親治療
      家族療法、集団療法
    3. 薬物療法
    4. 入院による治療
    5. 福祉情報、福祉の用い方

  3. コンサルテーション・リエゾン(C/L)、チーム医療 ・危機介入(子ども虐待の初期対応、自殺への対応、急性ストレスへの対応)
    ・C/Lのモデルの選択
    ・C/Lで必要な身体医学的知識
     神経学的知識、神経心理学的知識、疾患特異性精神症状、薬物に誘導される精神症状
    ・身体化障害への対応方法
    ・慢性疾患の子どもと家族への支援
    ・移植、高度医療など、医療チームへの参加
    ・他科や他分野とのコミュニケーションの技術
  4. 地域との連携 ・学校との連携
    ・保健機関との連携
    ・福祉機関との連携
    ・司法機関との連携