浜松医科大学医学部附属病院

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脳血管内治療、脳卒中一般

 急に起こる脳血管障害を総称して脳卒中と言います。具体的には①脳出血(脳内出血),②くも膜下出血,③脳梗塞の3つに分類されます。いずれも早期診断、早期治療が重要であり、脳卒中を専門とする医師が正しい診断を行い、適切な治療を行うことが良い転帰につながります。

 血管内治療は通常太ももの付け根から血管内に挿入されたカテーテルという特殊な管を通して種々の脳疾患を治療する方法のことです。従来の頭頸部の直達術と比べて、患者さんの負担が少ない低侵襲な治療法であり、血管造影装置の進歩、カテーテルやコイル、ステント等の治療デバイスの改良進歩により急速な発展を遂げてきています。当大学では脳血管内治療専門医が治療を行っています。血管内治療の対象疾患としては、脳血管閉塞による急性期脳梗塞症例の血栓溶解療法/血栓摘出・破砕・吸引術、脳動脈瘤(瘤内コイル塞栓術)、脳動静脈奇形(術前塞栓術)、頭頸部主幹動脈狭窄(頸部内頸動脈狭窄などの頸動脈ステント留置術含む)、頭頸部腫瘍(術前塞栓術、抗癌剤の動注化学療法など)などが含まれます。脳血管内治療が適切であるかは症例毎に慎重に検討した上で、治療を行うように心がけています。

日本脳神経外科学会専門医

日本脳卒中学会認定医

日本脳神経血管内治療学会専門医

平松久弥

頚部頸動脈狭窄症

はじめに

頸部頸動脈狭窄症とは、頸部の頸動脈分岐部に動脈硬化性粥状変化により血管の狭窄を生じ、これが原因で脳血流量の低下をきたしたり、頭蓋内塞栓の原因となったりして脳梗塞を起こす原因となりうる疾患です。通常の動脈硬化と同様に高血圧、高脂血症、糖尿病、喫煙、過度の飲酒などが危険因子となります。以前は、欧米人に多い疾患とされてきましたが、日本人の食生活の内容が年々欧米化するにしたがい徐々に増加傾向を示しています。

分類と重症度

頸部頸動脈狭窄症の分類は、症候性か無症候性かという点とその狭窄度で分類します。症候性とは、頸部頸動脈狭窄症が原因で脳梗塞やTIA(一過性虚血発作)などを生じた場合をいい、無症候性とは、その狭窄による症状がないものを言います。血管の狭窄度の分類は、いくつかの方法がありますが、血管造影での狭窄度を30-49%までを軽度、50%~69%までを中等度、70%以上を高度と分類するものが一般的です。狭窄度の計算方法はいくつかありますが、NASCETという大規模臨床試験での測定法が一般的で広く用いられます。

代表的症状

  • 塞栓性機序によるもの
    頸部頸動脈狭窄症によりその狭窄部に血栓が生じて末梢の頭蓋内血管に血栓が飛んでいって血管を閉塞させます。多くの場合は意識障害、構音障害、片麻痺、知覚障害ときに失語症などを起こします。狭窄部分を粥腫(アテローム)と言いますが、粥腫内の血管の破綻が起きて、その中の成分が同じように飛んでいって同様の症状を起こすことも最近ではわかってきました(可動性プラーク)。症状の中には24時間以内に症状が全く消失してしまうものもみられます。これを一過性虚血発作といいますが、脳梗塞の前兆として注意が必要です。また、塞栓(血栓)が眼の血管を閉塞させてしまうこともあります。この場合、片側の視力が高度に低下し急にものが見えなくなり時に眼の奥の痛みを訴えることもあります。これは一過性黒内障といわれ、頸部頸動脈狭窄症には比較的多い症状です。完全に閉塞し改善しない場合(網膜中心動脈閉塞症)、視力を失うこともあり得ます。画像評価にて狭窄部におけるプラークの性状がソフトであるものは遊離しやすく、塞栓性の合併症を来しやすいと考えられています。
  • 血行力学的機序によるもの
    頸部頸動脈狭窄症により脳の血流量が減少し、上記と同様な症状や、立ちくらみ、揺れるようなめまい感などを訴えることもあります。

診断方法

1)血管造影
大腿部または上腕の動脈からカテーテルという細い管を挿入して血管内腔の形状を観察します。

2)3D-CTA
約100ccの造影剤を上腕の静脈から短時間に注入して高速らせんCTで頸動脈を撮影します。周囲の構造物や頸椎の情報など解剖学的位置関係が観察できます。また、MIP法という平面への投射法により血管造影と同等の狭窄度の評価も可能です。

3)MRI/MRA
造影剤なしで頸動脈狭窄の程度をある程度評価でき、また、特殊な撮影法(black blood法)によりプラークの性状(ソフトプラークか否か)をより正確に評価できる様になりました。

治療方法

内科的治療(抗血小板剤、高脂血症治療薬等の内服)を行った上で、年齢、狭窄度、症候性か否か、合併症の有無を検討し、外科的治療を行うかどうかを判断します。外科的治療には、従来から行われている頸動脈血栓内膜摘出術(carotid endoarterectomy; CEA)のほか、血管内治療である頸動脈ステント留置(carotid artery stenting)があります。それぞれに長所、短所があり、当院では個々の症例を複数の医師でよく検討した上で、最善と思われる治療選択を行っています。この項では血栓内膜摘出術(CEA)について述べます。(頸動脈ステント留置については血管内治療の項をご参照ください。)

  • 頸動脈血栓内膜摘出術'(carotid endoarterectomy; CEA)

【適応】

1)内科的治療単独とCEAの比較

North American Symptomatic Carotid Endarterectomy Trial (NASCET), European Carotid Surgery Trial (ECST) Asymptomatic Carotid Atherosclerosis Study (ACAS), Asymptomatic Carotid Surgery Trial (ACST)のような大規模臨床試験が行われ、内科的治療単独と、CEA併用例について予後が比較検討されました。その結果、症候性の場合はNACSET法で50%以上の高度狭窄例でCEAが有効、無症候性の場合では60%以上でCEAが有効とされました。これを目安としつつ、患者さんの状態などを考慮したうえで手術適応を決定しています。

2)CEA/CASの選択

患者さんの年齢、狭窄部の性状など様々な要因を考慮して治療選択を行います。一般に全周性石灰化、不安定・ソフトプラークを有する例、狭窄部病変長が長いもの、狭窄前後に屈曲病変を有するもの、アクセスルート(胸部・腹部大動脈)に大動脈瘤などの病変を有するなどしてCASの施行が困難と判断された場合は、CEAが選択されます。一方、高位病変、CEA術後再狭窄、首が短い、頸部放射線照射後の症例、全身麻酔のハイリスクの心臓・肺疾患などを有する症例、対側内頸動脈閉塞例などの脳虚血耐性がない(側腹血行が期待できない)症例はCASが選択される傾向にあります。

【方法】

全身麻酔下に患側頸部を胸鎖乳突筋に沿って切開します。その後、総頸動脈、外頸動脈、内頸動脈を確保し、血行を遮断したうえで病変部の動脈切開を行います。血行遮断中は脳の血流を確保するために内シャントと呼ばれる器具を用いています。肉眼または顕微鏡下で内膜と中膜を丁寧に剥離して粥腫を摘出します。顕微鏡下で粥腫等の残存が無いことを確認した後、血管壁を縫合します。ドレーン(細い管)を1日留置して皮下に貯留した血液を排出する様にします。術後は3日程度の安静を要しますが、その後離床をすすめ、特に問題がなければがなければ術後10日くらいで退院が可能となります。

野崎孝雄