浜松医科大学医学部附属病院

診療科案内

Speciality Guidance

片側顔面けいれん

はじめに

当科では、1982年より顔面けいれんの外科的治療(神経血管減圧術)を行っています。後述のように、この方法は顔面けいれんを完全に治す唯一の方法で、現在までに約265名強の患者さんが手術を受けられ、大半の方が完治しております。
「顔面けいれん」とは片方の顔の筋肉、特に目の周囲や口の周囲の筋肉がピクピクとけいれんする疾患です。多くは眼瞼周囲からピクツキが起こり出し、やがて口の周囲も眼と同時にけいれんするようになります。次第に症状が強くなると、時には顔の片方がひきつれるようになり、「眼がけいれんのために閉じてしまって反対側の眼でしか前が見られない」、または「見にくい」と訴える方もいらっしゃいます。耳の中の鼓膜張筋という鼓膜の緊張を維持している筋肉も顔面神経支配ですので、この筋にけいれんが起こると、耳の中でガサガサという耳鳴りがすることがあります。大抵の方が、「緊張すると症状が強くなる」、と言われ、また眼を強く閉じたり、口を思い切り動かすことによりけいれんが誘発されます。

原因

この「顔面けいれん」の起こる顔の表情筋には、顔面神経という神経が脳から出て分布し、大脳の命令を伝えています。「顔面けいれん」の原因は、この顔面神経が脳から出たところ(神経流出部:Root Exit Zone)で、血管(大半は動脈)に圧迫され続けることによって起こります。どの位の時間圧迫され続けると「顔面けいれん」となるのかは圧迫する血管の太さによっても違い、個人差が大きいものと思われています。顔面神経は脳から出た後、内耳孔を通り、耳の前あたりから皮膚の表面に出、額(前頭筋)、目の周囲(眼輪筋)、口の周囲(口輪筋)、耳の中 (鼓膜張筋)の筋肉に分布します。 三叉神経痛同様、神経に動脈が当たることによって神経の軸索(電線にたとえると、中心の金属の線の部分)の周りにある髄鞘(電線の金属線の周りにあるビニルなどの被覆物にあたるもの)がとれてしまい、この部分で顔面の表情筋の動きを伝える電気信号がショートしてしまい、顔面けいれんが起こると考えられています。繰り返すことによって顔面神経核(神経細胞)が興奮性を帯びてきて顔面けいれんの症状がひどくなってゆきます。

治療法

現在、主に以下の3つの治療法がよく行われています。

内服薬

多くの方で緊張するとけいれんが強くなるため、精神安定剤などを服用します。けいれんが軽い方では、コントロールされる場合も有りますが、けいれんが完全に止まることは有りません。けいれんが軽くなる程度です。

ボトックス

ボツリヌスという細菌の毒素を薬剤にしたものです。神経が筋肉に接合している部分に作用しますので、注射をした後、約3-4ヶ月は注射をした部位ではけいれんが止まります。ただ、元の原因である神経に対する血管の圧迫が取れたわけでは有りませんので、この期間を過ぎると再びけいれんが起こってきます。結局、この方法では完治する事はありませんが、症状を押さえ込むことは出来ます。この治療を続けるには年間に4回ほどは注射を繰り返す必要があります。

神経血管減圧術

もともと神経に血管の圧迫が加わることで起こっている疾患ですので、神経から血管を離すことによって顔面けいれんを治すことができます。血管を神経から離して他の部位に固定します。この神経血管減圧術では、この病気を完治させることができ、再発することはあまりありません。合併症もわずかです。神経から血管を離すことによって、軸索の周りの髄鞘が再び回復し、電気信号がショートを起こさなくなり、症状が取れると考えられています。三叉神経痛と異なり、顔面けいれんが完全に止まるまでに時間がかかる(時に数ヶ月)のが特徴です。

顔面けいれんについて

「眼瞼けいれん」という、「顔面けいれん」に名前も大変よく似た、しかし異なる病気があります。これはジストニアという、身体の筋肉に力が入ってしまう病気の一つに分類されています。この病気は眼瞼の両側に起こりやすく、神経血管減圧術では直りませんので、「顔面けいれん」としっかり区別する必要があります。この病気はボツリヌストキシン治療で症状を抑えることが出来ますので、こちらも当科の外来で治療しています。