方についてどのようにお考えですか?静岡大学との再編・統合については、まずは機関同士で交わした合意書をきちんと尊重し、そこに込められた意義をしっかり理解していただきたいと考えています。私たちの法人を廃し、静岡大学の法人に統合することで、大きな法人のもとに新たな形の二つの大学が生まれる。これは浜松だけの利益を考えたものではなく、静岡県全体にとってもプラスになる、とても魅力的な提案だと自負しています。もちろん相手のある話ですので、簡単ではありません。合意書に基づく再編案の詳細については、静岡大学の教職員の皆さんに十分に伝わっていない部分もあるかもしれません。だからこそ、私たちが何を意義と捉えて提案しているのかを、直接お話しする場をぜひ持ちたいと考えています。静岡大学の学長にも繰り返し申し入れていますが、残念ながら現時点では実現していません。一方で、この再編構想には浜松市を中心に結成された期成同盟会が力を注いでくださっており、中部・東部の方々も加わるなど、静岡県全体からの期待を強く感じています。少子化の進行や社会の大きな変化の中で、大学も自ら変わっていかなければなりません。将来的には、さらに違う形へと発展していくかもしれませんが、まずは大学間で合意した計画に基づいて一歩を踏み出す――その姿勢がとても大切だと考えています。大学運営において、公約にもありましたが、ダイバーシティについてどのように進めていきたいとお考えですか?今回、初めてダイバーシティ担当の女性副学長を置きました。本学には看護師として多くの女性が活躍していますが、教員や事務系の管理職となると、まだまだ数が少ないのが現状です。組織の中に女性の声を取り入れることは、確実に発展につながる――それはさまざまな組織の事例からも明らかです。ですから、その機会をつくるのが私の役割だと考えています。非常勤の理事・監事や経営協議会の委員にも女性に加わっていただき、多様な視点から意見をいただけるようにしています。ただ、ダイバーシティは決して「女性に限ったもの」ではありません。若い世代や、さまざまなハンディキャップを持つ方も含めて、幅広い多様性を尊重し、本学人を尊重するというお考えについて、武田信玄の「人は城、人は石垣」と言う言葉にも通ずるものがあると思いますが、本学の運営において力を入れていきたいことはございますか?武田信玄の言葉はその後「情けは味方、仇は敵なり」と続き、人材や信頼を基盤とする重要性を示しています。私自身は、「人を尊重すること」に重きを置き、個々の人が力を発揮できる場をつくり、組織全体が活性化するようにしたいと思っています。もちろん最終的な決断と責任は学長が担いますが、その前にできるだけ多くの意見を聞き、風通しの良い組織で判断を下していく――そんな大学にしていきたいですね。加えて、これからは「国際化」を一層進めていきたいと考えています。将来的に国内では医師が余る時代が来るとも言われています。だからこそ、世界で活躍できる力を持つ人材を育てたい。国際的な視野を身につけ、日本に限らず世界を舞台に働ける学生が育ってくれればと願っています。研究面では、本学の強みである「光の研究」をさらに伸ばしていきたい。地元企業との連携を一層強め、浜松ならではの独自性ある研究を推進していきます。また、本学は臨床研究の実績でも高い評価を受けています。企業との協力体制をさらに整え、研究成果をできるだけ早く患 者さんに還 元できる仕組みづくりにも力を注ぎたいと思います。成果を患者さんのもとへスムーズに届ける――その意識を常に大切にしていきます。ドラッグロスも問題になっていますね。ドラッグロスは、いま日本全体で非常に深刻な問題になっています。進行してしまうと、患者さんが本当に必要としている薬が手元に届かない状況に陥ってしまう。これは医療に携わる一人として、何としても解決していかなければならない課題だと感じています。そのためにも臨床研究の重要性は非常に大きいと思います。臨床研究中核病院では「診療とともに新たな医療の開発に取り組むこと」が医師のミッションと定義されていますが、浜松医大においても同様で、診療を行うだけではなく、自分たちの手で新しい医療をつくり出すことが医療者の使命であると考えています。そして、浜松医大から生まれた研究や治療法が世界中の患者さんに貢献できるようになる――そんな大学へと発展していくことを願っています。国立大学法人のミッションに地域貢献があるので、それは本当に良いことだと思います。 本学のミッションの一つである診療についてもお聞かせいただけますか?本学の大きなミッションの一つは、県内唯一の医科系大学病院として、高度で最先端の医療を患者さんに提供し続けることです。もう一つ重要なのは、地域の方々が安心して暮らせるような医療体制を、県や市と協力しながら築いていくことだと思っています。実際、静岡県の東部には今も医師が不足している地域があり、医師の偏在は県内でも大きな課題です。その解決に大学としてもしっかり取り組み、地域全体の医療の質を高めていきたいと考えています。静岡県との関係について、今年度地域診療教育システム開発センターが新設されました。センターに期待する役割を教えていただけますか?今年度新設された「地域診療教育システム開発センター」には、大きな期待を寄せています。特に医師が不足している地域では、まず総 合 診 療 医がファーストタッチで診 療にあたり、その後必要に応じて専門医へつなぐ――この仕組みは地域医療にとって非常に望ましい形だと思います。そのためにも、総合診療医の育成をこれから一層強化していきたいと考えています。また、静岡県東部の医師少数地域には、指導医とともに専攻医も派遣し、医療の質を県内でなるべく均てん化・標準化していくことが重要だと思っています。私自身が三島市の出身ということもあり、県東部の課題については肌で感じています。地域の方々と積極的にコミュニケーションをとり、「何に困っているのか」を直接お聞きしながら、その解決に役立てるよう取り組んでいきたいと考えています。もちろん大学だけでできることには限界があります。ですから、県や地域の病院としっかり連携し、県全体にコミットして医療の質を高めていくことが、浜松医大の大きな役割だと思っています。地域との関係において、静岡大学との大学再編・統合があると思いますが、今後の進め3 NEWSLETTER
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