浜松医科大学 NEWSLETTER 2025.10(Vol.52 No.1)
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sweNinmulA 29 NEWSLETTER医学部医学科30期生(2009年3月卒業)飯塚 修平設 計・マーケティングに携 わっていました。「自社製品を自分でも使ってみたい」という半ば10歳年下の同級生たちと交流を深めながらした(もっとも、毎度の試験や国試はオジサンなど、低侵襲でありながらも根治性と安全性を(CE)による内視鏡操作の導入と教育、安全私はもともと工学部出身の機械系エンジニアで、企業にて内視鏡関連機器の研究開発・邪な動機から医師を志し、ご縁あって2004年に浜松医科大学へ学士編入学いたしました。の、2回目の学生生活は楽しい思い出となりま入学には堪えましたが…)。卒後は、浜松医科大学医学部附属病院での臨床研修、浜松医療センターでの外科後期研修などを経て、現在は浜松医科大学呼吸器外科グループに所属し、聖隷浜松病院で呼吸器外科専門医として勤務しています。聖隷浜松病院では、浜松医大や愛知県がんセンター中央病院で学んだ経験を基盤に、完全胸腔鏡下手術の導入を推進してまいりました。肺癌に対する根治手術や良性疾患の難症例への対応、さらにはロボット支援下手術兼ね備えた治療の提供を目指しています。この分野において、製品開発の場で培った経験が大いに役立っています。たとえば、手術器具や内視鏡システムの選定、臨床工学技士管理体制の整備などを通じて、手術の質の向上に取り組んでいます。2021年の法改正により、CEによる術中の内視鏡操作が可能となり、当院ではいち早く体制を整えました。今では、CEは当院の胸腔鏡下手術において欠かせない存在です。私が導入した「対面倒立式」の胸腔鏡下手術は、精緻な術操作を可能にする一方、内視鏡操作が複雑で、高度な訓練を要します。内視鏡開発の経験を活かし、習得すべき操作を分析・言語化することで教育を効率化し、安全でスムーズな胸腔鏡下手術の導入と外科医の負担軽減を同時に実現しました。また、企業と共同で「ターニング把持鉗子」という新たな手術器具の開発も行いました。これは一 見シンプルな機 構ながら、肺 部 分切 除術における切除量とマージンを最適化する、現場ニーズに即した画期的な器具です。企業の技術者と意見交換を重ね、満足度の高い製品を世に送り出せたと感じています。さらに、既存の手術器具についても、使用感や改 善 点 、安 全 性に関するフィードバックを各メーカーに積極的にお伝えしており、エンジニア視点ならではの現場の声として意見を受け止めていただいています。近 年 、低 侵 襲 手 術がトレンドとなる中で、「安全性・根治性・侵襲性」のバランスをいかに保つかを常に意識しています。特に企業時代に学んだ「安全を最優先に考える」思想や戦略を、臨床の現場や教育に応用していきたいと考えています。最近では、そのような取り組みが少しずつ形となりつつある実感も得られるようになりました。10年遅れで医師の道に入りましたが、今こうして医療と社会に貢献できる場をいただいていることを、何よりありがたく思っています。今後も「エンジニア視点で最適化する外科手術」を追 求し、同じように遅 れて外 科 医を志す方々にも勇気を届けられれば幸いです。最後に、私に学士編入の機会を与えてくださった大 学 関 係 者の皆 様に、この場をお借りして心より御礼申し上げます。▲ ロボット支援下手術にも力を入れています。エンジニア魂が着火します。▲ 高難度の胸腔鏡操作を臨床工学技士(右上)が主体的に  行っています。(筆者:左上)▲ 聖隷浜松病院▲ ものづくり企業と共同開発した画期的な「ターニング把持鉗子」エンジニア視点で最適化する外科手術

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