浜松医科大学 NEWSLETTER 2025.10(Vol.52 No.1)
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こうayn20NEWSLETTERが必要であり、また現地の人々の文化や価値観を尊重することが信頼関係を築く第一歩であると実感しました。 帰国の途につく際、車中で出会ったケニアの青年から「なぜ夢を一つに絞るのか、両方追えばいい」と言われました。その言葉は、医師としての夢と国際活動への関心をどう両立させるか悩んでいた私の背中を押してくれました。 ケニアでの1か月は、医療の学び以上に、人間としての視野と感受性を大きく広げてくれた時間でした。これからも、この経験を糧に国際医療に貢献できるよう歩んでいきたいです。(ISL)に参加し、約1か月間ケニアに滞在するこの研修は、私にとって忘れがたい経験となりました。のレストランでチャパティや豆料理を味わったりしました。ちょうどラマダンの時期で、ケニア人街との対比は強烈で、同じ都市に全く異なる世界たときのことは、特に印象深く残っています。「リピート・アフター・ミー」と声をかけると、元気しがる場面でも、彼らはまっすぐに笑顔を向けてくれました。その笑顔に救われ 、私自身も「もっと伝えたい」と心から思えました。授業の2024年春、私は国際医療研修プログラム機会を得ました。医学生としての学びに加え、現地の文化や生活を肌で感じることができたナイロビに到着した初日、森を散策したり、現地のチームメートが日の入りを待ってから夕食を食べる様子を見て、宗教が日常生活に深く根付いていることを実感しました。また、ナイロビ市街の高層ビル群と、その背後に広がるスラムが共存している現実に心を揺さぶられました。研修の中心は、現地の学校や孤児院での性教育や健康教育、さらに医療キャンプでの診療補助でした。学校で子どもたちに授業をしいっぱいの声が教室に響き渡り、一瞬で緊張が溶けていきました。日本の子どもなら恥ずか終わり、手を振ってくれた子どもたちの目の輝きは、今でも忘れられません。一方で、スラムや山間部での医療キャンプは混沌とした状況で、患者の受付や診察の流れが整わず苦労しました。疲労と苛立ちを感じる中で「自分がやりたい学び」より「今ここで自分に求められている役割」を優先する必要性を痛感しました。また、過酷な環境下では英語力が著しく低下する自分にも気づき、将来海外で医師として働くために語学力と精神的余裕が不可欠だと強く感じました。医療の現場では多くの学びがありました。ある孤児院で子どもの診察を任されたとき、最初は緊張でいっぱいでしたが、終えるころには「医療者として責任を持つ」という感覚が芽生えました。さらに、ある男児が症状をランダムに訴える様子を見て、医学的所見だけでなく心理社会的背景にも目を向ける必要性を知りました。これは教科書では得られない貴重な気づきでした。生活面でも印象深い経験が多くありました。長時間のドライブ中に野生動物を目にしたこと、サファリでライオンの狩りを観察したこと、ビクトリア湖畔での静かなひととき。さらにディアニという町では、美しい海を楽しみつつも、スラムで見た現実との落差に戸惑い、同じ国の中に複数の「世界」が存在することを考えさせられました。 この研修全体を通じて、私は「自分の普通は他の人にとってもそうである訳ではない」というシンプルですが大切な真理を学びました。チームで協力するには互いの違いを受け入れる姿勢K e医学部医学科2年杉山 心寧▲ 子どもたちはみんな写真が大好きでした!▲ 現地の小学校の子どもたちと▲ 日本では見ない、鎌状赤血球の説明画ケニアで学んだ医療と文化― ISL研修を振り返って

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