浜松医科大学 NEWSLETTER 2022.10(Vol.49 No.1)
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sweN inmulA▲ シドニー大学在学中▲ 大学院卒業写真 初めまして。医学科30期生の桐田と申します。現在、兵庫県神戸市の神戸海星病院の麻酔科に勤務しており、プライベートでは2児の母です。在学中にEnglish Speaking Society:ESSの部長を務めました。昨年のニュースレターで在校生がESSの活動を再開されたことを知り、嬉しさのあまり学務課に連絡を取らせていただき、この度ニュースレターに寄稿する運びとなりました。私は日本で生まれ育ったので、英語力の習得に非常に苦労しました。ESSの活動で診療英会話やUSMLE勉強会を仲間たちと地道に継続したことが私の英語力の大きな基盤となっています。卒後は学会発表や大学院での勉強や課題の提出はもちろん、各国の研究者とのコミュニケーションに英語は欠かせません。これもESSの活動でお世話になった先生方はもちろん、先輩、同級生や後輩のお陰です。在学当時は海外交流事業等が充実しており、大学院には各国からの留学生が多数在籍しており刺激的な学生生活を送ることができました。 話は変わりますが、私が麻酔科を志した動機についてです。4年生当時に所属していた東海学生ACLSの活動を日本蘇生学会にて発表の機会をいただきました際に、麻酔科でACLSのインストラクターをされていた先生に丁寧にご指導いただきました。その後、ポリクリ実習中は、麻酔計画の立て方はもちろん気管挿管や静脈ルート確保などの手技を教わり、6年生時の選択実習ではドイツのフライブルグ大学医学部麻酔科への留学に送り出していただきました。当時から無痛分娩やペインクリニックなど痛み診療分野でご活躍の先生が多く在籍されており、興味を持つきっかけとなりました。 自身は卒後臨床研修を経てオーストラリアのメルボルンのAlfred Healthの麻酔科に臨床留学しました。その後シドニー大学医学部大学院に進学し、Pain Management修士号を日本人で初めて取得しました。在学中に2度妊娠出産した経験から、特に小児の痛みに興味を持つようになりました。現在はワクチンや注射などの針の痛みを緩和する各国の取り組みについて研究し、日本での普及活動に励んでおります。アメリカ、カナダでは小児科学会でワクチンの針の痛み緩和についてのガイドラインが平成22(2010)年に発行され、CDCなど政府もこれをサポートする指針を提示しています。平成27(2015)年にはWHOも声明を発表。一方、日本ではワクチンの針の痛み緩和について学会等のガイドラインに公式に定められたものはなく、まだまだ痛いのは「当たり前」「しょうがない」という、痛みを我慢させるしかない文化が残っております。ワクチンの接種は健康な児でも避けて通れないという問題があります。子どもが痛みを繰り返し経験し、周囲が適切な処置や対応を怠った場合、将来慢性痛につながるリスクがあることが数々の報告から分かって来ています。日本の痛みに対する文化的背景なども考慮しつつ今後も痛みの教育分野の発展に貢献して参りたいと思います。 令和2(2020)年から新型コロナウィルスの感染拡大の影響でキャンパスライフも制限されていると伺っております。サークルの部員集めに苦労するなど、人間関係への影響を危惧しております。学生時代に築いた人と人とのつながりは宝物です。学生の皆様がどうか健康で、仲間たちと楽しい学生生活を送れるよう祈っております。医学科30期生(平成21年3月卒業)桐田 泰江21NEWSLETTER子どもの痛みに寄り添う医療を目指して

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