浜松医科大学 NEWSLETTER 2022.10(Vol.49 No.1)
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私の研究私は認知心理学や認知神経科学と呼ばれる分野をバックグラウンドとしています。これはヒトの心や脳の働きを情報処理として捉え、その仕組みを明らかにしようとする学問です。そのために認知課題を行ってそれにかかわる行動を計測したり、またそうした課題を行っている時の脳活動を計測したり、といった実験的手法が用いられます。 自閉スペクトラム症の背後にある認知や脳機能の特性を理解するためにこれらの手法が役立つと考え、現在研究を進めています。自閉スペクトラム症は神経発達症のひとつですが、その脳神経基盤に関しては確立した知見が得られていません。その原因として、自閉スペクトラム症は研究室を出ると・・・NEWSLETTER休日の過ごし方本や漫画を読んだりして、まったり過ごしています。読むのは小説が多いですが、このところは若干マイナーな伝記が好きです。座右の銘は「“ケ・セラ・セラ”、なるようになる」先行きを考えて不安になりそうなときによく思い出します。目標「人を理解したい」というのが研究の一番のモチベーションなので、生きている間に少しでもそれに役立つ仕事をしたいと思っています。最近のおすすめ子どものこころの発達研究センター 特任助教異なる神経基盤を持つ多くのサブグループから成っており、現在の多くの研究ではそれらをひとくくりにしているために結果が再現されにくいのではないか、という仮説が提唱されています。私はさまざまな認知課題における行動の特徴パターンを詳しく調べることで、自閉スペクトラム症の多様性を捉えられないかと考えています。さまざまな認知課題を自閉スペクトラム症の当事者の方々に行ってもらうと、多くの課題において、定型発達の方々に比べて個人差が大きい傾向が見られます。また得意とする課題や苦手な課題も人それぞれです。そうした得意・不得意のパターンの類似性に基づき、自閉スペクトラム症のサブグループを特定できれば、高い多様性を持つ自閉スペクトラム症の生物学的基盤の解明に役立つのではないかと期待できます。こうした研究をMRIによる脳代謝計測や脳機能計測などと組み合わせ、自閉スペクトラム症の理解に貢献したいと考えています。12岩渕 俊樹 研究者紹介〜自閉スペクトラム症に関連する認知や脳機能の特徴を明らかにする

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