開イ6本学では毎年、一般の方を対象とした公開講座を開催しています。▲ 図2ペースメーカーが植え込まれた患者さんの胸部レントゲン写真。矢印はペースメーカー本体を、矢頭はリード先端部位を示します。正常洞調律とは 不整脈とは脈拍のリズムが不規則になることです。まず、正常の脈拍（正常洞調律）がどのような仕組みで作り出されているかを説明します。心臓は「ドクン、ドクン」と収縮することで血液を全身に送るポンプの役割をしています。心臓は4つの部屋に分かれていて、上の部屋を「心房」、下の部屋を「心室」といい、心房と心室はそれぞれ左右2つあります。正常洞調律については心臓をひとつの小さな会社に例えると理解しやすくなります。まずは社長である洞結節が心臓を収縮させるための命令を電気信号として発信します。心臓には社長の命令を伝えるための電線が張り巡らされています（刺激伝導系といいます）。心房は社長の近くにいる社長直属の部下であり社長の命令が直接伝わり収縮します。心室は社長から離れているため平社員のような存在で、社長の命令は房室結節（部長）、ヒス束（課長）、プルキンエ線維（係長）を経由して心室まで届きます。このように社長の命令通りに心房と心室が協調して収縮しているのが正常洞調律になります（図1）。徐脈性不整脈とは 徐脈性不整脈とは脈がゆっくりになる不整脈の総称であり、代表的なものとして洞不全症候群と房室ブロックがあります。これらの不整脈も心臓株式会社のどこに異常があるかに着目すると分かりやすいです。洞不全症候群とは社長である洞結節のはたらきが悪くなる病気であり、そのため洞結節からの命令が少なくなり、または一時的に止まることで脈がゆっくりになります。房室ブロックとは部長や課長にあたる房室結節やヒス束のはたらきが悪くなることで、洞結節（社長）の命令を心室（平社員）に伝えることができなくなります。脈が遅くなることで失神等の症状が出現することがあります。いずれの病気も脈をはやくする（社長や部長・課長のはたらきをよくする）良い薬はないため、ペースメーカーを植え込む治療が一般的です（図2）。ペースメーカー本体が社長や部長のかわりとなり、脈拍が遅くなりすぎないようにリードの先端から電気刺激を出すことで心臓を収縮させます。頻脈性不整脈とは 頻脈性不整脈とは脈がはやくなる不整脈の総称であり、代表的なものとして心房細動があります。心房細動になると脈拍が不規則になり、脈拍数の調節がつきにくくなります。そのため動悸を感じることがあります。また、心房細動になると心臓の効率が悪くなり、心臓に負担がかかるため心不全になりやすくなります。さらに、心臓のなかで血液の流れが滞りやすい場所があり、そこに血のかたまり（血栓）ができやすくなります。何かの拍子に血栓が飛んで脳を養う血管につまってしまうと脳梗塞を発症してしまいます。そのため心房細動の治療として脳梗塞予防のために抗凝固薬（血栓を溶かす、または血栓をできにくくする薬）を内服することが重要です。心房細動を正常洞調律に戻す方法として、1） 抗不整脈薬の内服、2） 電気ショック治療、3） カテーテルアブレーション治療の3つがあります。カテーテルアブレーション治療では足の付け根の静脈から細いくだ（カテーテル）を血管内に挿入し心臓まですすめます。カテーテルの先端から60℃程度の高周波通電を行い、心臓の一部を焼灼することで、心房細動の原因となる異常な電気の発生源をつぶしたり閉じ込めたりすることで心房細動を治すことができます（図3）。カテーテルアブレーションは3泊4日の入院を要する手術に準じた治療になりますが、その心房細動抑制効果は抗不整脈薬の内服や電気ショック治療に比べて高いことが知られています。今年度は「浜松医科大学の最新の医療」をテーマに2講義を実施しました。その中から1講義をピックアップしてご紹介します。▲ 図1心臓の解剖（トーアエイヨー『インフォームドコンセントのための心臓・血管病アトラスより改変引用』）▲ 図3心房細動に対するカテーテルアブレーション治療。一般的に心房細動の原因となる異常な電気信号のほとんどは左心房に流入する肺静脈から発生するといわれています。肺静脈が左心房に注ぎ込む出口の部分を取り囲むように焼灼することで、異常な電気を閉じ込め心房細動にならないようにします。内科学第三講座（循環器内科）助教NEWSLETTERこちらから本学オンデマンドでWEB受講できます。−心臓の不協和音−成瀬 代士久不整脈のはなし公開講座ズームイン
元のページ ../index.html#7