浜松医科大学 NEWSLETTER 2022.3 (Vol.48 No.2)
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3令和4(2022)年4月、大学院看護学専攻博士後期課程を新設することとなりました。既存の修士課程を博士前期課程に変更し、前期・後期の一貫性ある系統的な教育を行う大学院看護学専攻としました。修士課程が開設されたのは平成11(1999)年のことですので、20年以上が経過したことになります。本課程の設置は、修士課程での研究を発展させたいという修了生・在学生の要望や、看護系大学等の教育機関で教育を行う人材の質担保の必要性に応えるものです。NEWSLETTER従来我が国が抱えている超高齢社会における諸問題のみならず、現在直面している新型コロナウイルス感染症パンデミックによって、平時には見えなかった保健医療上の様々な問題が顕在化しています。これらの複雑な問題を解決していくために、倫理観、高度な実践能力、他の専門職と連携するチームケア能力など高い能力を備えた看護職の養成がより一層認識され、大学での看護学教育に寄せられる期待はこれまで以上に高くなっています。どのような分野・領域にあっても、科学的に事象を把握したり、既存の考えにとらわれず新しい発想で問題解決にあたったりするような、従来にない能力を身に付けたリーダーとなる看護職の存在が求められています。また、全国的に看護系大学が急増しているなかで、教員の質を担保し、研究・教育能力を充実させるべき状況にあります。本博士後期課程は、倫理観と国際的視野を備え、異分野と融合して看護学分野での新たな価値を創出する教育・研究によって社会に貢献する人材を養成することを目的としています。博士前期課程までの学修によって培われた看護学の専門性をさらに追究することに加え、医学・工学・情報学による教育研究資源を取り入れることによって、視野を広げ、課題の抽出や解決のための方法論の検討において、柔軟な発想を持ち、多様で新たな視点から考究する能力が修得できるよう、教育課程を編成しています。具体的には、研究方法論に関する科目において、静岡大学工学部や情報学部の教員により学際的研究を行う方法について学ぶ授業を設けたり、共通選択科目として本学大学院医学専攻博士課程で開講している科目のうち、看護学専攻の学生にとって有用性の高い科目を医・看共通科目として設けたりするなどしています。また、学生の研究テーマによっては、本学大学院光医工学共同専攻で開講している授業や、産学官連携のプロジェクトによるセミナー・ワークショップ等への積極的受講を勧奨するなど、学際的研究能力を涵養するための環境を作っています。異分野と融合し看護学分野での新たな価値の創出に貢献する教育・研究を行い、オピニオンリーダーとして地域、国内外で活躍できる人材を養成していくべく、教員一同努めてまいります。例例4特定の看護場面における看護師と患者家族との相互作用を明らかにする質的研究をテーマとする学生用いる質的研究の分析方法や関連した学問分野(哲学・社会学等)の学内外のセミナー等への参加用いる分析方法に精通した副指導教員との研究指導体制の構築新しい健康管理デバイスを用いた患者への介入研究をテーマとする学生当該分野(工学・情報学等)の研究室の見学、定期的な情報交換への参加主指導教員が当該分野の研究者と共同研究体制を整備学生の学際的研究を看護学専攻博士後期課程における多様な学修機会の提供本学看護学科は開設以来、看護学の発展のため、また社会の要請に応えるべき努力を着実に積み重ねてきています。近年看護は社会からさらに質の高いレベルが求められ、活躍の場も国内外、また病院内から地域までとますます拡大してきています。この新たな時代に、本学看護学科は社会・医療ニーズと学ぶ側のニーズ(看護職者自身のキャリアアップ、自己研鑽など)の高まりに応えるべき着実で、かつ附属病院看護部とのこれまでにない強固な連携を含めた大胆な改革を行い、「教育」、「研究」、「実践」の三本の柱にそった基礎教育から生涯教育に至るまでの一貫した盤石な(工学・情報学の教員による授業)・行動神経科学 ・医学統計学・疫学方法論  ・医療倫理学浜松医科大学大学院 光医工学共同専攻で開講している授業の受講(「メディカルデバイスデザイン」「医薬品・医用機器開発概論」等)産学官連携のプロジェクトによるセミナー、研究発表会やワークサポートショップ等への継続参加必修科目看護学研究方法論の履修共通選択科目1科目以上履修異分野連携異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異異分異異異分異異分異異分異異分異異異異異異分異異異分異分異分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分異分分異分異分分分分分分分分分異分異分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分分野分野分野野分野野分野野分野野分分野分野野分野分野分野野野分野分野野分野分野分野分野分野分野分野野分野分野野野分野分野野野分野野野野野野野野野野野野野野野野野野野野野野連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連連携携携携携連携携携携携携携携携携連携携携携携連携携携携携連携携携携連携携携携携携携携連携携携携携携携連携携携携携異分野連携組織基盤体制が整備されたと言えます。令和4(2022)年4月からはまさに整備された組織体制のもと、系統的で充実した学習プログラムに基づいた教育実践がダイナミックに行われ、本学看護学科の新たな時代の幕開けの年になることが期待できます。そして看護学教育の学びの場として本学看護学科は、多様なニーズに応えることができる大学としてますます「選ばれる大学」、「期待される大学」になっていくと確信します。監事 村本 淳子 (元 三重県立看護大学理事長)博士後期課程の設置

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